ほうれんそう
「というわけで、聖女と王子をくっつけて穏便に問題を解決しよう作戦は失敗しました!」
聖女と秘密を暴露しあった翌日、私は朝イチでディッツの研究室を訪れた。
ドリーに状況を洗いざらいブチまけるためである。
共同作戦でまず一番大事なのは『報・連・相』だよね!
私の話を聞いていたドリーは、眉間に深々と皺を寄せると、超重量級のため息をついた。
おーい、淑女がやっていい顔じゃなくなってるぞー。
「ご、ごめんね……?」
「いや……お前が謝る必要はない。全ては世界を救う才能のない女神が悪い」
ほんそれ。
世界を救うの下手なんだから、おとなしく見守ってるだけにしてほしい。
全て善意の行動なだけに、下手な邪神よりタチが悪い。
「聖女が自ら王室を引き受けたほうが楽だったが……致し方あるまい」
ドリーは軽く首を振ると顔をあげた。
「他に何かアイデアあるの?」
「まあ、色々とな。聖女と王子の思考を誘導して、無理やり恋人関係に持っていくことも、できなくはないが……」
「ドリー……!?」
「冗談だ。後でお前にバレた時が怖い」
「そこは聖女にバレたらとかじゃないの?」
ドリーは肩をすくめる。
「腹黒はともかく、人心操作までやったらお前は俺を軽蔑するだろう。聖女ごときにどう思われても構わないが、お前に嫌われるのだけは困る」
「う、うん……」
こらそこー!
女の姿でそういうこと言わない!
なんか変な扉が開きそうになるから!
ただでさえ中身が好きな人だからって、無駄にドキドキしてるんだぞ?
「そもそも、王子がボンクラだった時点で、ヤツを使った王室改革が難航するのはわかっていた。聖女が恋をしない可能性も視野に入れている」
相変わらず、ドリーの王室評価はさんざんだ。
気持ちはわかるけど。
「お前が、聖女に恋愛も救済も強要しなかったのは、現時点では正解だ。運命に怯えている聖女が、横から何と言われたところで自発的に行動できないだろうからな」
「……だよね」
「聖女の件は一旦棚上げだ。いつものことだが、まずは目の前のことを片付けるとしよう」
ドリーは立ち上がると、デスクから本を数冊持ってきた。
「何するの?」
「授業の準備だ。今の肩書は非常勤講師だからな」
「うわー……そういえばそうだった。ドリーがその姿で教壇に立ってるとことか、違和感しかないけど」
ドリーは呆れ顔で私を見る。
「お前も他人事じゃないぞ。俺が担当しているのは『攻略対象接近イベント』である、男女合同授業だからな」
「あ」
「せいぜい、教師の指導に従い真面目に授業を受けることだ」
そういやそんなイベントありましたね!
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