お姫様の秘密
「かんぱーい!」
「か、かんぱーい……」
今日は無礼講で騒ごう、と決めた私たちは勢いよく乾杯した。少し遅れて、セシリアがおどおどとカップを持ち上げる。
「せっかくだし、何か話しましょうよ。……っていっても、何を話すべきなのかよくわかんないけど」
「わかんないって、リリィ……」
ライラが私を見て呆れる。
しょうがないじゃん、立場上同世代の友達少ないんだよ。
このメンバーだと恋バナは地雷原だし。
「クレイモアの飲み会だと、こういう時は秘密を暴露し合うな」
ついに飲み会と断言してしまったクリスがアイデアを出す。
「ひひひ秘密……? そ、そんなものを話さないといけないんですか?」
「あはは、怯えなくていいよ、セシリア。秘密といってもちょっとしたことでいいんだ。そうだな……私の秘密からいこうか」
クリスはにやっと笑った。
「……実は、酒樽はまだあと二個ある」
つまり合計四個の酒樽が女子寮に持ち込まれているわけか。
「どれだけ酒を持ち込んでるのよ!? あと、その調子だと、絶対つまみになるものも隠してるでしょ!」
「干し肉とか燻製チーズならあるよ。といっても、こっちは非常食だけど」
それを聞いて私たちは頭を抱えてしまう。
どんだけワイルドなんだ、このお姫様。クレイモアでの育ちを差し引いたとしても、やることが豪胆すぎるだろう。
フィーアがふう、と重いため息をもらす。
「クリス様、あとで食料品だけでもチェックさせてください……保存食は定期的に新しいものと交換しないと、いざという時に困るので」
「そうだね、もうばらしちゃったし……フィーアにはあとで保存箱を見せてあげるね」
おおざっぱなクリスが消費期限を考えて管理するとは思えないもんね……。女子寮特別室からネズミや虫が大量発生とか、笑い話にもならない。
「じゃあ次! 誰かない?」
「うーん……そうねえ……」
私たちはそれぞれ考え込む。
私もそれなりに秘密は持ってるけど、その大半は本物の機密情報だ。女子会でちょっと共有できるかわいい秘密が少ない。
ぐぬぬ、こんなことで苦労するハメになるとは。
「では、僭越ながら私が」
す、とフィーアが手をあげた。
「珍しいね、フィーア」
「場を盛り上げる話題を提供するのも、その……学生らしいふるまいと聞きましたので」
補足説明がちょっと学生らしくないけど、その姿勢は学生らしくていいと思うよ!
「それで、秘密って何なんだ?」
「フィーアって、全然自分のことを話さないから興味あるわ」
クリスとライラも興味津々、とフィーアを見つめる。
「では私のネコミミにご注目ください」
うんうん、いつも通りふかふかモフモフでかわいいね!
「このネコミミは、消すことができます」
そう言った瞬間、ぴこぴこ動いでいたネコミミが、跡形もなく消えてしまった。
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