そこに嫁ぐなんてとんでもない!
お嬢様たちの主張を聞いて、私は首をかしげた。
婚約者が3人もいるケヴィンに声をかけて、非難をうけないとは思ってない。でも、『お前はケヴィンなんかにはもったいないからやめとけ』なんて台詞を聞くとは思わなかった。
彼女たちの心理がさっぱりわからない。
「……どうしてそう思うの?」
「だ、だって! リリアーナ様ほど素晴らしいご令嬢はいらっしゃいませんわ!」
「……はい?」
私、耳が悪くなったのかな?
この子たち、素晴らしいとか言い出したんだけど。
どう答えていいかわからず、黙っているとコレットたちは口々にしゃべりだした。
「私たち、先日の王妃様のお茶会のお話を伺ってます!」
「王妃様の悪意に満ちたパーティーに招待されても、一歩も引かず毅然と対応したとか!」
「その上、アイリス様やゾフィー様の誘惑にもなびかず、ひとり孤高を貫いたんでしょう?」
「なんて強く、気高い方なのかと……私たち感動いたしました!」
話しているうちに興奮してきたのか、彼女たちは頬を赤らめて瞳をうるませている。
「あなたたち……私が怖いんじゃないの?」
「とんでもありません!」
「私たち、いいえ! この場にいる令嬢はみんな、リリアーナ様のファンです!!!」
ファン?
好きなものを応援するファン?
その意味で合ってる?!
「ええと……じゃあ、みんなが私に声をかけないのって……」
「リリアーナ様のように高貴で素晴らしい方に声をかけるなんて……そんな、恐れ多いことできませんわ」
「今お話しているのだって……緊張で……立っているのもやっとですもの」
「きっと、あとで他の子たちに、抜け駆けだって責められてしまいます」
彼女たちの言葉を聞きながら、私はその場で気絶しそうなレベルのめまいを感じていた。
ええと、つまり何?
王妃のお茶会以外で私がぼっちだったのって、好きすぎて避けられたってこと?
確かに、たまにいるけどさあ!
クラスメイトをアイドル化して、近くに行くの恥ずかしい、なかなかおしゃべりできないっていう思春期女子! いや目の前にいるお嬢さんたちみんな箱入りの思春期女子だけどさ!
君たちは恥ずかしいだけかもしれないけど、遠巻きにされたこっちは、ハブられてるのと一緒だからぁぁぁぁああああああ!!!
コミュニケーションして!
本物のアイドルじゃないんだから、同じ人間として扱ってえええええええ!!!
「でも……それでも……リリアーナ様がケヴィン様とご結婚されるのは、お止めしないと……って、思って!」
「そういえば、ケヴィン様にはもったいない、なんて言ってたわね。どうして?」
「リリアーナ様には、もっとふさわしい相手がいると思うんです!」
コレットは、ぐっと拳を握り締めた。
「今の王宮で、王妃様に堂々と発言できるのはリリアーナ様しかいらっしゃいません! オリヴァー王子と結婚して王子妃となり、この国を導いてください!!」
それだけは、絶対嫌!!!!!!!!!
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