ファーストコンタクト
フランと今後の対策を話し合った数日後、私はまたドレス姿でお茶会に顔を出していた。社交に慣れるにはまず場数が必要、ということでイベント参加頻度は結構密だ。
といっても、今日も今日とてぼっちなんですがね?
せめてケヴィンやその婚約者のうち誰かが参加しててくれたら、強引に話しかけにいくこともできるんだけど。強気少女ライラあたりは面倒見がいいから、ぷりぷり怒りながらでも相手してくれるし。今回みたいな事情さえなければ、ツンデレかわいい友達になれそうなのになー。
まあ、ぼっちお茶会にも慣れてきたし、大人に顔を売っておけばいいか……。
早々に人との交流を諦めて、会場の隅でため息をついた時だった。
「ご主人様」
近くに控えていたフィーアが不意に声をかけてきた。
「あちらの方々が、ご主人様にお話があるようです」
振り向くと、女の子が5人固まって立っていた。年齢は私と同じか、ちょっと下くらい。どの子も仕立てのいいドレスを着こなす、育ちの良いお嬢様だ。
そして彼女たちは全員、顔色が真っ青だった。
顔を引きつらせ、目にウルウルと涙をため、手足もぷるぷるさせながら、身を寄せ合って立っている。
さながら、猛獣を目にしたハムスターの群れである。
なんだこの決死の表情。
怖がられている自覚はあるけど、さすがに何の関係もないお嬢様に喧嘩を売ったりしないぞー。
見つめると、彼女たちはびくっと体をすくませた。
うむ、埒が明かない。
「初めまして、私、リリアーナ・ハルバードと申します。お目にかかれてうれしいわ」
とりあえず、挨拶してみる。私が軽くお辞儀すると、自分たちが名乗ってなかったことに気が付いたのか、お嬢様たちは次々に自己紹介を始めた。
「わ、私は、コレット・ローランサンですっ……! ははは、初めまして」
「私は、ミリアナ・レミントンです……! ふわぁ……お美しい……」
「わわ私、ローズマリー・ゴールドでひゅっ……」
「サラ・ハーひょ……ハートベル、です……お会いできて光栄ですぅ……!」
「ドロテア・ロクサンヌです! 初めまして!」
彼女たちの家名はいずれも聞いた覚えがある。確か都市に住む伯爵家、子爵家だったはずだ。
自己紹介がすむと、お嬢様たちはお互いにうなずき合う。そしてリーダー格の女の子、コレットが意を決して口を開いた。
「あ、ああああのっ、実は私たち、リリアーナ様にお伺いしたいことが……あって……!」
「何かしら?」
「ケヴィン・モーニングスター様とご婚約されるって、本当ですか?!」
「ちょっといいな、って思ってるところよ」
私は今のところケヴィンの『婚約者候補』だ。だから彼らの前以外でその関係を断言するわけにはいかない。私は微妙な言い回しで答えた。
「おおおおおっ、おやめに、なってくださいっ!!」
「あなたも、ケヴィン様に思いを寄せるひとりなのかしら」
「ち、違います!」
コレットはぶんぶんと首を振った。
「ケヴィン様にリリアーナ様はもったいないです!!! おやめください!」
「…………はい?」
なんですと?
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