魔女を殺したのは誰か
シルヴァンに向かって金貨の魔女への愚痴を吐き出すクリスティーヌを見ながら、私は心の中でこっそり彼に土下座していた。
ごめんなさい。
金貨の魔女がクリスティーヌの注文をキャンセルしたのは、私が命令したからです……。
恐らく、ゲームの中で『金貨の魔女』が死んだのはクリスティーヌの依頼が原因だ。
ディッツは虹瑪瑙を買う金欲しさに、王室からの闇の依頼を引き受けたのだろう。でも、王妹殿下の性別をごまかすなんてヤバイ話に関わっておいてタダですむわけがない。大金を手にしたあとで、刺客を差し向けられて殺されてしまったのだ。
そして、呪いが解けたはいいものの、師匠を失い悲しみにくれたジェイドは、魔女を蘇らせるために、最悪の
ジェイド闇堕ちの悲劇を回避するため、私がディッツと専属契約を結んで注文をキャンセルさせたんだけど……その結果、今度はクリスティーヌが性別をごまかしきれなくなって、困っているらしい。
ジェイドを救うために仕方ない選択だったけど、まさかそれが巡り巡って、クリスティーヌを追い詰めることになってたなんて。
なんでこんなところにフラグが転がってるんだよ!!!!!
もうちょっと、ヒントとか伏線とかないわけ?
ブーメランの戻ってくるタイミングと場所がぜんぜんわかんないんだけど!!
はい、ヒントなんかないですねー!!!
知ってたー!
くっそう、ポンコツ運命の女神が見守ってるだけのこの世界、悲劇フラグ回避するの難しすぎ!
ハードモードとかいうレベルじゃないよね?
ナイトメアモードに突入してない?!
とはいえ、私にはここでクリスティーヌを放っておく、という選択肢はない。
私にはピンチに追いやった者の責任として、彼を救う義務がある。
「変身薬の最低落札価格は……高いな。こんな大金、どうやって持ち歩いてるんだ」
「さすがに金貨じゃ無理だから、宝石を用意した。オークション会場で多少買いたたかれるだろうが、まあなんとかなるだろ」
「なるほど……ちなみに、その薬を分けてもらうことはできないか? 金は半額だすから」
「はあ? 何に使うんだ」
「ボクにだって事情があるんだよ」
「この先どれだけ必要になるかわかんねぇからな。お前にやる分はねえよ」
「じゃあ、ボクもオークションに参加しよう。この先はライバルだね」
「てめえ、ずるいぞ! これは俺の薬だ!」
「まだ落札してないでしょ」
……とりあえず、この口喧嘩を止めないとダメだな。
「ふたりとも、そんな危ない橋を渡るのはやめたら?」
「リリィには関係ない話だから」
「お前はすっこんでろよ!」
おおう。
クリスティーヌはともかく、シルヴァンまで変身薬の話を聞いて、ちょっとテンションがおかしくなっちゃってる。
私はふたりを止めるために、爆弾を投下することにした。
「その薬、飲んだら死ぬわよ?」
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