21 連綿と
リルがシャンタルの話し相手として私室へ来た日の夜、キリエが部屋へ戻ってきたのはもうかなり遅い時間であった。
「それほどにご成長になられたのですか」
「はい」
リルと話をした後、シャンタルは一層話し方がしっかりとした。子ども子どもした話し方から、大人とも普通に会話を交わせるぐらいに変化を見せた。
キリエとミーヤは一から赤ん坊に物を教えるようにして話をしていたのでどうしても
リルはその途中経過を知らないのでごく普通に丁寧に話をしていた。そうして気づけばシャンタルの話し方も、子どもらしさを残しながらも一気に大人びた話し方になっていた。
「もうすっかりご年齢と等しい、いえ、それ以上にご成長になられたような気がいたします」
「そうですか……」
キリエが黙り込んだ。
「明日で13日目です、残りは8日と当日を残すのみ……」
「はい……」
いよいよ覚悟を決めねばならない時が来たのだろうか。
「できるだけ早く最後のお役目について話せるよう、明日はまずシャンタルのことをお話していきましょう」
翌朝、13日目の朝からゆっくりとシャンタルに話を始める。
「今朝はキリエとミーヤが何か話をしてくれるのかしら?」
そう可愛らしく尋ねるシャンタル。これから話さねばならぬことを思うと2人は
「はい、今朝はシャンタルのお話をして差し上げようと思います」
キリエがそう言い、にっこりと優しい笑顔を浮かべる。
ミーヤに聞いていた通り、シャンタルの話し方は少しこましゃくれた少女そのもの、
「なんでしょう、
正直にそう言うと、
「あら、そうかしら?」
少し肩を持ち上げながら首を
「リルとお話なさったのがよかったのでしょうか」
「リルのお話は面白かったわ、まだまだ世界には知らぬことがあるのだと分かりました。またお話したいものです」
昨日の話し方とは全く違う。
「はい、それはまた機会がございましたら。今はシャンタルのお話です」
「そうでしたね」
そう言ってまたにっこりと笑う姿はもう子どもではなく少女そのものである。
「シャンタルは、十年でお役目を次の方、次代様にお譲りになりマユリアをお継ぎになられます」
「そう言ってましたね」
「はい。そしてマユリアにおなりになった方はまた十年を
「それも聞きました」
「シャンタルの前には代々シャンタルでいらっしゃった方がおられます。先代のマユリア、先々代のラーラ様、そしてキリエはその3代前の方からあなた様まで6代にお
「長いですね」
「幼い頃から五十年以上宮におりますので、気づけばそうなっておりました」
キリエは自分が誰に話をしているのかふと分からぬような気がしてきた。これではまるでマユリアにお話申し上げているような……だが目の前に座るのは銀の髪、褐色の肌を持つ「少女」である。つい先日までお人形のようだった「黒のシャンタル」に間違いはない。
「ラーラ様の一つ前の代のシャンタルはさる貴族のご令嬢でした。マユリアの座を降りられた後はご実家に戻られ、40歳になられた今もご実家の離宮でお過ごしとお聞きしております」
ミーヤも初めて聞く話であった。シャンタルの
「そのさらに一つ前の先代、この方は少し離れた村のご出身で、村に戻られた後に同じ村の方とご結婚をなさったそうですが、その後の詳しい話はお聞きしておりません。お元気でいらっしゃったら50歳におなりのはずです。そのさらにご先代はご
ミーヤは代々のシャンタルが実際に存在していたこと、人にお戻りになった
「
「そうなの」
「はい。そしてマユリアは御誕生の折に親御様からいただいたお名前、『
「ではラーラ様は『真名』がラーラ、だったということですか?」
「はい、その通りです」
全てを知るような「黒のシャンタル」はやはり自分のこと、
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