11 昇進
「ルギに、ですか?」
ミーヤが不思議そうに聞く。
「ええ、王はマユリアとルギの間を疑ってらっしゃるようです」
「ええっ!」
ミーヤは驚いたが、世間的に見るとそう見る向きがあってもおかしくはない。それほどルギはマユリアに深く忠誠を誓い、離れることなくおそばに控えている。それを知っているからこそ、ミーヤは以前トーヤがルギに殴りかかろうとした時、命にかけてもマユリアの
「何しろ
通常、衛士になりたい者は侍女と同じく募集に応募してくるか、もしくはこれも行儀見習いの侍女と同じく誰かの推薦などで入ってくることが多い。他に憲兵やその他の警備の者と同じく兵学校を出てそこから選ばれる者もいる。
だがルギは、いきなり奥宮に現われ、マユリアの鶴の一声で
本来なら隊長職はそれなりの地位に就く者が拝命するものだが、そういうわけでルギは無冠の
「なので、マユリアが後宮に入る為に交わした約束の一部にルギのことも入っているのです」
「どのようにですか?」
「ルギに正式に兵としての立場を与えること、正確には隊長職にふさわしい地位を、です」
宮にいる間はマユリア直属ということで身分や地位がなくとも隊長を勤められたが、宮を出て他の場所ではやはり
王宮はその要求を飲み、今の第一警護隊をそのまま後宮のマユリア付きに移動すると決めた。
だが、そのマユリアの
「さすがに宮の中で、特にマユリアのお立場ではあり得ぬことですが、王が疑う気持ちも分からないではない、という空気があります」
「そうだったのですか……」
時々、侍女と衛士が気づけばそのような仲になっていたということで
「使者がマユリアとの面会を求めてきて、今はお
「まさか、そんなこと」
「ええ、ありえません。ですが、人というのは疑い出すと切りがないものですからね……」
王ともあろう者がそんな小さな心をお持ちとは、とミーヤは驚いた。
「まあ、王と言えども
キリエがミーヤの心のうちを知るように言った。
「ですから、そのことも含めて一度マユリアとお話をしてこようと思います」
「はい……」
ミーヤにはそうとしか言えなかった。
その夜、キリエは7日ぶりにマユリアと会って話をし、翌日王宮からの使者にこう答えた。
「ただいまは重要なお籠り中です、どなたともお会いいたしません。あと数えるほどの日々とはいえわたくしはマユリアです、もしもご信頼いただけないと申されるのなら
この言葉を使者は飛んで帰って王に伝えた。
この
そうして王宮は沈黙した。
が、ただ一つだけ、マユリアではなくキリエに、という形でと追加の質問が来た。
「ルギがどこにいるのか、ですか?」
キリエは使者に向かってわずかに眉をそばだて、はあっと情けなさそうにため息を一つついた。
「まだそのようなことを……ですが、お相手がお相手、使者殿のお立場もありましょう、特別に侍女頭の権限でお答えします。ルギはただいまマユリアの勅命で宮の外でお役目についております。内容までは申せませんが今の時期にとても大切なお役目です。これでよろしいですか?」
「は、はあ……」
と、使者がなんとも言えぬ返事をする。
「もう一つ私からの
使者が戻って王にそれを伝え、マユリアの後宮入りより一足早くルギの
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