第269話 貴女に成りたい(ロマンシス? 女子高生)

「色違いのおそろにしよ」

 いつも、陽子はそう言う。

 完璧なおそろにはしない。

 色が何コかある場合は、絶対に色違い。

 色が一色しか無いものに関しては、おそろいにしようって持ちかけない。

 変なの。

 アタシは。

「えー、一緒にピンクとか良くない?」

 完璧なおそろが良いのに。

「ピンク、私似合わないもん。こっちのクリーム色にする」

 そんなことない。

 陽子の肌は白くて、髪はちょっと明るめ(地毛だって。羨ましい!)、いつだって綺麗にカールが決まってる。睫毛もバッシバシに長いし、目も大きい。唇も、何も塗らなくたって艶やかなピンク色だ。

 絶対に、ガーリーなピンクが似合うのに。

爽子そうこはピンクで決定?」

 完璧な美少女が、アタシをのぞき込んで聞く。

 ああ。

 キラキラで、可愛い、アタシの親友。

 アタシは、アンタになりたいって思うのに。

「……んー。アタシも、ピンクはやめよっかな」

 アンタは、いつもそれをアタシに許してくれない。

「じゃあ、ブルーは? これ超キレイだし、大人っぽい。爽子に合うと思う」

「アンタがそう言うなら、それにしよっかな」

 いいのに、アタシに似合う色なんて。

 そうじゃなくて、アンタと完ペキおそろにして、アンタになりたいって思うのに。

「じゃあ、決定!」

 ニカッて、まるで男の子みたく大きく彼女が笑う。

 小づくりな顔と合わないけれど、そのミスマッチさがまた可愛い。

 ああ。

 キラキラ。ふわふわ。完ぺきな美少女。

 少しでもアンタに近付きたいのに、同じになりたいのに。

「じゃ、レジ行こ」

 許してくれないアンタが憎らしくて、でも、やっぱりどこまでも大好きで。

 アタシと同じ、けれど色の違う腕時計をした手首を見ながら。

「ちょっと、まだアタシ見たいものあるんですけどー」

 その手を掴んで、アタシの見たい方へと引っ張った。


 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16817139556867875344)で色違いおそろを選んでいるJKたち。

 同化したいタイプの好意って、意外とクソデカ感情なのでは? と思い、書いてみた。

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