第270話 龍虎揃えば(百合。片想い?)

「色違いのおそろにしよ」

 ショッピングモールに入っているファンシー雑貨店で。

 後ろの女子高生たちがキャッキャと話していた。

「えー、一緒にピンクとか良くない?」

「ピンク、私似合わないもん。こっちのクリーム色にする」

 そんな会話を聞きながら、ふむ、とうなずいた。

(おそろい、かぁ……)

 色違いや、模様違いのおそろいだと、重くないかも。

 私は、大好きで大好きでたまらない、先輩を思い描いて考える。

(おそろいのもん持つって、ちょっと憧れるッスよねぇ)

 この雑貨店には、前髪を留めるためのヘアピンを探しに来た。

 仕事のときに使うので、そこまで気合入ったのでなくてもいいが、しかし可愛い方がテンション上がるなあ、出来れば安い方が良いなあ、という動機で来たのだけれど。

(可愛くって、先輩とおそろだったらよりテンションぶち上がるッスね)

 私は、ふんすと鼻息荒く、改めてヘアピンをぎろぎろと品定めし始めた。


 *


 職場にて。

「というわけで、ヘアピンッス」

「……ファンシーっちゃ、ファンシーだな」

 先輩には、デフォルメされた龍の付いたヘアピン。

「お揃いッス!」

 自分には、同じデザインのデフォルメ虎の付いたヘアピンだ。

 もちろん、今もばっちり付けている。

「干支か何かか?」

「あ、そんなこと書いてあった気がするッスね!」

 よく見てなかったけど。

「だったら、私は卯年うさぎなんだがなあ」

「あ、私は巳年へびッス」

「なんでそっちで買わなかったかね」

「ピンと来なかったッスもん。それに、先輩は龍のが似合うッス」

「それは褒め言葉なのか……?」

「うッス」

「……まあ確かに、龍のが好きだけど」

「自分も虎のが好きッス」

「似合ってるな、そっちのが。確かに」

「先輩もめっちゃ似合うと思うんで、付けて下さい!」

「はいはい」

 先輩の髪にも、可愛い龍のヘアピンが付いた。

「今日は、何か色々イケそうな気がするッス!」

「何かって?」

「何か、色々ッス!」

「ああ、そう」

 恋と新しいグッズとお揃い効果は、めちゃめちゃに抜群だ。


 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16817139556892172486)の子たちの会話を聞いて。

 こちらの二人(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816452220699379418)の再登場です。

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