第247話 桜吹雪に誓う(片想い百合。歳の差従姉妹)

「このままがいいって言ったら、どうする?」

「このまま……」

 風が吹いて、ざあっと桜吹雪に視界が覆われる。

 花の向こうには、一三かずみちゃんが居る。

 桜はあまり香りがしないはずなのに、不思議と微かな甘い匂いを感じた。

 夢みたい。

 絵のように綺麗な夕焼けの空。真っ白な桜。大好きなひと。

 美しい、って多分こういう光景のこと。

「そう。ずっと、このまんまの関係」

「そうだなあ……」

 私は、ふむ、とうなずいて考える。

 このまんまということは、言葉通り、このまんまということだろう。

 このまんま。仲の良い従姉妹同士。

 一緒に遊びに行ったり。お泊りしたり。

 けど、キスは駄目だし、ちょっと下心のあるハグなんかもNGだろう。

 うーん。

 それは困るな。

 けど。

「それじゃヤダーって気持ちは、もちろんあるよ」

 私は、にっこり笑って一三ちゃんを見た。

「でも、一三ちゃんを本当の本気で大好きだから、やっぱり待てるよ。一三ちゃんが私を同じように好きになってくれるまで。それを待つことを許してくれるあいだ」

「……一生かも知れないよ」

「うーん。難しいかな? でも、その間もずっと一緒に居られるなら悪くないかも」

 そこまで色々な忍耐が持つかはさておきとして。

 今のところの所感ってやつとして。

「そう」

 そこで、一三ちゃんが微笑んだ。

 ふわっと。綿菓子が、口の中で溶けるみたいに、甘くやわく。

 うわ、って思った。

 うわ、綺麗、好き、って。

「わかった」

 さあああ

 また風が吹いて、桜が舞う。

 桜吹雪の間から、一三ちゃんの手がこちらへ伸ばされた。

「じゃあ、待っていて」

「か、かずみちゃん……」

 ぎゅっ

 一三ちゃんの手が、私の手を温かく包んでくれた。

「絶対に、答えを出すから。勇気を持って、アンタに伝えるから」

 そのときまで、どうか。

 一三ちゃんの瞳が、真っ直ぐに私を見た。

 キラキラした光が見える。

 それは、灯り始めた電灯の所為かも知れないけど、私には星に見えた。

「待っていて」

「……待ってる」

 私は、私を包む両手を握り返して言った。

 そこで、あっと気が付いた。

「ふふっ」

「? どうしたの?」

「前にも、ここで、こんな風に一三ちゃんと手を繋いだなって思って」

「そうだった?」

「もー。ちゃんと思い出してよ」

 寂しいから、ちゃんと。

 そう言って、私は一三ちゃんの手をもう一度ぎゅっぎゅっと強く握り締めた。


 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16817139555710164768)のあと。

 勇気を出すのには、あともう少しかかるかな、という一三さんと。

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