第239話 たぶん私の中にもその花の芽はあった(従姉弟。中学生×高校生)

 ドンッ ドンッ ドンッ

 耳の奥で、ずっと花火が鳴っている。

 自分の部屋にいるのに、まだあの花火会場にいるみたいだ。火薬の匂いがしてきそう。

 パラララ……

 花火が咲いて、散っていく。

 夜空の光。

 色とりどりのそれらに照らされ、こちらを見る彼の顔は。今までに見たことのない顔をしていた。

「────」

 花火の爆音で、かき消されそうな声だったはずなのに。

 何故か、彼の言葉は私の耳まで届いた。

 真っ直ぐにこちらを見つめる瞳が、気付けば自分より少し上の位置にあった。

 繋いだ手は角ばっていて、温かくて、知らない手みたいだった。

 柔らかくて熱っぽい、あの子どもの手は、いつの間にか消えていた。

(男の人、みたい)

 まだ中学生のはずなのに。

 すらりと若木みたいに伸びた彼は、もう男の子というより大人の男性の方が近い。

 いつの間にか。

 知らない間に。

 私は、火照った頬へ手をやった。

(どうしよう……)

 ドンッ ドンッ ドンッ

 耳の奥の花火が鳴りやまない。

 子どもの冗談や、気の所為で済ませられないほど真剣な眼差しに。

 私はもう、囚われてしまった。


 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16817139555359511417)その後の透子とうこさんの様子。

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