第210話 知りたいけど、知りたくない(百合。片想い。社会人)
買い物帰りの、夕暮れのカフェ。
友だちと今日の戦利品について話していると、時間を忘れる。
会話がふと途切れても、特に苦痛は無い。
美味しそうにカフェラテを飲む彼女の顔が好きだ。
と。
友だちが、ふとスマホの通知を見て「あ」と声を上げた。
ちら、と見た通知欄のアイコンは、フェイスブックだった気がする。
「『パートナーシップ制度を利用しました』、か。わー。高校の頃から付き合っててっていうの、なんか、いいねぇ」
「知り合い?」
「うん。高校の頃の友だち。お相手も私、知ってるんだけど」
「クラスメイトとか、隣のクラスとか?」
「そう。お隣さん。……雰囲気のある二人でさぁ。放課後、二人が教室で話してる姿見るだけで、ただならぬ感じがあったというか……忘れ物を取りに行って、けど教室入るのがめっちゃ憚られる感じがしたの、覚えてる。他のカップルのときは、全然かまわなかったのにね。むしろ、入って行って少しだけちょっかいかけたりなんかして。でも、その二人のときは誰も、そういう気持ちにならなかったんだよね。神聖な雰囲気、とでもいうのかなあ。何か、そんな感じだった」
「……どっちか、好きだったりした?」
「んー……どうだろ、憧れはあったけど。綺麗な絵画を見るような。けど、恋とか嫉妬とか、そういうのではなかった気がするなあ。あんまりそう言う意味で憧れた人って思えばいないかも」
「そっか」
「うん」
ところでさ、と友だちが話題を変えて、その話はうやむやになった。
(好きじゃなかったのにはちょっと安心したけど。でも恋愛の話題に繋げらんなかったなあ……)
彼女が、恋愛的な意味でどういう人を……性別や性格や見た目やその他もろもろ……を好むのか。そもそも恋愛感情があるのか無いのか。
何も情報を持たない私は、今日もやきもきしながら彼女をとても好きでいる。
END.
フェイスブックの二人はこの二人(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927862673931748)。
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