第209話 ねーえ?(同棲百合)

「ふわあああああおおおおう」

 晩ごはんも終わり、洗い物もお風呂も終えて、夜のまったりタイム。……のはずが、パートナーがいきなり隣で奇声を上げた。

「びっくりした。いきなり何」

 パートナーは、タブレットを手にしたまま打ち震えている。

「めっちゃ好きな字書きさんが居たんだけど」

「あ、二次創作の話」

 私は、読んでいた本を閉じた。

「お仕事忙しいって呟きからもうかれこれ一年と……あれ、二年くらいかな? Twitterも支部も更新してなかった人がいるんだけど、その人が久しぶりに生存報告とSS上げてて!」

「へえ」

「めっっっっちゃんこ嬉しい!!」

「そりゃあ……良かったね」

「は~~~~生きててくださっただけで嬉しいのに。SSとか、ご褒美か?」

 彼女は早口で言うと、笑顔でタブレットに向き直る。

 その横顔の、可愛いこと。可愛いこと。

 しばらく、それを見つめてから。

「ねーえ」

 抱きついて、耳元で甘く呼んでみる。

「ちょっと待って。今三巡目だから」

 うん。知ってる。スクロールバー二往復半したの見てたもの。

「君が嬉しいのは嬉しいけど」

 すり、と頬に頬を寄せて。

「かまってくれないと、拗ねちゃうよ?」

 軽く、耳にキスを。

「……いきなりキスは反則」

「じゃあ、ね?」

「ん~~~~」

 彼女は私の手を撫でながら、宙を仰ぎ。

「四巡目まで待って」

 真顔で言った。

「……しかたないなあ」

 このままでいいなら、と私が条件を出すと。

「いいよー」

 彼女は笑顔でうなずいた。

 ……これは、五巡目六巡目まで待たされるなあと察しつつ。

 何だかんだ言って、君が倖せならそれでいいって本気で思ってるから。

「ま、仕方ないよね」

 特等席で、君の笑顔を堪能しよう。

 そう決めると、私はしっかり彼女に視線を定めた。


 END.


 久しぶりに更新したのはこちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927862683788621)のお姉さん。神が復活したに伴い、自分もちょっと復活したみたいです。

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