第177話 いちばん効果のある薬(薔薇。幼馴染。唯行《ただゆき》×公彦《あきひこ》)


「……ただいま」

「おかえり。……だいぶん疲れてるね」

「ああ……」

 そう言うと、唯行ただゆきはごろんと床に寝転んだ。

 ここは僕の部屋で、まだ唯行はコートのまま。

 よほど疲れてるんだろうなと心配になった。

「大丈夫? 起き上がれる?」

「……無理かも知れん」

 唸るように唯行が言った。

「何か、飲み物でも入れてこようか?」

「アキ」

「ん?」

「……キスして欲しい」

「え」

 唯行が、そんなことを真正面から素直に言うのは珍しかった。

 いつもは、勝手に思い立ったらする、みたいな感じなのに。

 これは、かなりかなり疲れが酷いのかも知れない。

 僕は、うん、と一つ、うなずいてから。

 唯行のそばにしゃがんで、


 ……ちゅ


 彼の唇に、そっとキスを落とした。

「……」

「……」

 唯行が目を見開き、こちらを凝視する。

 恥ずかしくて、ふいと目を逸らした。

「これで、いい?」

「………………ああ」

 ゆっくりと起き上がり、唯行は顔を覆う。

「ちょっと、目が覚めた」

「それは良かったね……?」

 何とも言えない沈黙の後、彼はゆらりと立ち上がった。

 まあ、何かこう、照れくさいよね。恋人同士とは言え。

 けれど唯行は部屋を出て行きざま、

「……シャワーを浴びて来たら、また来る」

 ぼそっと言った。

 それは、もっとキスするってこと?

 なんて聞けずに、僕はひとり、赤面した。


 END.


 こちらの(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816700426030846302)二人です。大学四年生くらい。

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