第169話 即決の青(お姉さんとオネエさん)
「あ、これ」
その日。
ジョセフィーヌは買い物をしていた。
ちょっと足を伸ばした先にあるショッピングモールで。
新しく出来た雑貨屋には、和洋折衷、様々な雑貨が置いてあった。
北欧風テキスタイルのエプロンの横には、和柄の手ぬぐい、その向こう側には中華風の鍋掴み……と言った具合に。
食器も、和食器から洋食器、色々なものが取り揃えてある。
けれど不思議と雑多な雰囲気ではなく……心地好い店だった。
その店の片隅に、それはあった。
「綺麗……」
青い江戸切子のおちょこ。
「あの子、好きそうねぇ」
ジョセフィーヌの頭に過ぎったのは、彼女の親友。
……親友、と心の中で勝手に思っているだけで確認したことは無いし、これからもする気は無いし、というより心の中でそう認識しているだけでも気恥ずかしいのだが、まあとにかく、彼女の親友である映子は、こういう繊細でいて、キリリと怜悧な印象のものを好んでいた。
ジョセフィーヌの好みとは少し違うが(彼女はもう少し柔らかいテイストのものを好んだ)、それでも充分美しいと思う。
「これも買っちゃいましょ」
即決して、奥の箱を手に取った。
誰かのものを即決できるこの瞬間が、ジョセフィーヌは大好きだった。
(誕生日まであと二ヶ月くらいよね)
ちょうどいいわ、とうなずく。
(気になる男へのプレゼントは全然決まらないっていうのにねぇ)
まったく、何でかしらね。
ジョセフィーヌは苦笑しながら、ぐるりともう一周、店を回ることにした。
END.
こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927861287289259)の二人の片割れ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます