第62話 そんな変なこと聞く前に言うことがあると思う(百合? 片想い。高校生)
掃除の時間。和歌子は、ゴミ捨て帰りに、友人の中山がベンチに座り、ソフトクリームを舐めている姿を目撃した。
「あ、ソフトクリーム」
掃除の時間中に何してんだとツッコむよりも、羨ましさが先立ち、ついそう言ってしまった。
「ん? いる?」
「くれんの? いる!」
即答する和歌子に、中山は笑って、
「はい」
とソフトクリームを差し出した。
ぱくっ
和歌子は、喜び勇んでひと口かぶりつく。
「んまー」
口の中が冷やっこく、甘い。倖せの味。
「……へー。和歌子は、かじる派なんだねぇ」
「? 何が」
「ほら、ソフトクリームとかアイスって、舐める派とかじる派。かじると言うか、咥える派に分かれるじゃない?」
「それがどしたの」
「それでね、わかることがあるのよ」
悪戯っぽく笑いながら、中山はソフトクリームをじっくり舐め取る。
「? 何、心理テストみたいな?」
「まあ、そんなの」
「ちなみに、私はかじったり舐めたり、両方だよ? その方が食べやすいじゃん」
「まあねぇ……」
ふふ、と意味深に中山の笑みが深まった。
「で、テストの結果は?」
「ああ、それはね」
「おーい、和歌子ぉ、担任が呼んでたよぉ! 早く来ないと居残りだーって」
そのとき。遠くから友人の咲田が和歌子に呼びかけた。
「げっ、マジか! じゃ、ちょっと行って来る!」
「はいはーい。いってらっしゃーい」
「……アンタ、こんなとこで何やってんの」
咲田は、和歌子とすれ違い様に手を振り合ってから、そのまま中山の方へやって来た。
「んー? サボり」
「堂々としてんなぁ……」
そのソフトクリームどしたの、と咲田が問えば、
ちょっとそこのコンビニで買って来た、と得意げに中山が言う。
呆れた顔で「抜け出してんじゃないよ……」そう咲田がぼやいた。
「で、何話してたの」
「ん? アイスを使った心理テスト」
「心理テストぉ?」
「そ。舐める派か、かじる……咥える派か」
ぺろり。
これ見よがしにソフトクリームを舐め上げながら、中山は言った。
あー……と、何かを察した顔になる咲田。
「よくそんなの、和歌子に言えたね」
中山が肩を竦めた。
「残念ながら、答えを言う前に行っちゃった」
「そりゃ良かった」
和歌子は、この手の話題には疎いのだ。聞いたら、赤面して騒ぎ出しただろう。
「アンタねぇ、同性相手でもセクハラになるんだからね」
「わかってるよぉ。だから一応、テキトーな答えを言うつもりではあったよ」
「ホントかねぇ」
それから、咲田は首を傾げて。
「アンタ、ホント好意を伝えるの下手だよね」
「何のことかなー?」
しらばっくれる中山に、やれやれと咲田がため息を吐いた。
END.
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