第32話 再出発
引っ越し準備をしながら私はこれから始まる新たな子供達との生活に期待が膨らんでいた。相変わらず経済的には苦しいと思うけど私の稼いだお金は全部私達の為に使えるのだ。もう誰かに振り回される事もない。
義父や義叔母夫婦も新居に必要なものをいくつか買い揃えてくれた。
もう未練などない。前に向かって進むだけだ。
夏休みを待って直ぐに引っ越しした。
こうして私は12年間の結婚生活に終止符を打ったのだ。
結婚した以上離婚はしないと心に決めていたが何故そんなにこだわっていたのだろう。
もっと早く決断すれば良かったと思ったが私には再出発するには必要な時間だったのだろう。
出口のない長い長いトンネルの先にやっと明かりが見えてきた気がした。
拓哉には散々振り回されてきたけれど感謝している事が4つある。
1つは3人の子供に恵まれた事。
2つは離婚届を提出してくれた事、もし拓哉が離婚届を勝手に提出していなかったら私はきっと離婚届にサインしなかったと思うから。
3つ目は子供の親権を私にしていてくれた事。
そして4つ目は拓哉にあらゆる手段で鍛えられて如何なる事にも動じない程の精神力、忍耐力を身につける事が出来た事。
お陰で私はどんな苦難も切り抜けられる自信がついた。
今後1人で3人の子供達を育てていくには並々ならぬ苦労があるだろう。
しかし、離婚した今、私の心は清々しかった。
一夜明けて3階の窓から見た朝日は眩しく輝いていた。
山下志乃。34歳、今日からいよいよ再出発だ。
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