第25話 度重なる浮気
そんな時、家に女性から拓哉に電話がかかってくるようになった。
その頃まだ携帯は普及していなかったので連絡方法は専ら固定電話だった。
至る所に公衆電話もありテレホンカードも普及していた。
「誰から?」と私が聞くと「店のパートさんから仕事の事で」と言っていた。
ある日拓哉の留守中に例の女性から電話があったので「主人は今留守です。どちら様ですか?」と聞いたら急に驚いた声で「ほんとに奥さん?おねえさんじゃないの?」と逆に聞かれた。
この事がきっかけで事は急展開した。
拓哉は週に1度位しか帰って来なくなった。
数日後、例の女性から電話が掛かってきて山岡由美と名乗り隣の三浦市でスナックを経営しているという。私の事はお姉さんと拓哉が言っていたらしい。
私は「子供も3人いて離婚などしていない」と正直に答えると一旦電話は切ったがその後拓哉に確認したのだろう、日を変えて再度電話が掛かって来た。
拓哉は私の事を妻と認めたらしいが「大嘘つきなので本気にするな。
離婚しようと思っている」と言っているらしい。
「それは拓哉に騙されている」と淡々と私が言うので山岡由美さんは興奮した声で「本当に奥さんだったらそんなに冷静に出来るはずがない」と。
私は「拓哉の浮気は今回が初めてではないし、いつも相手に嘘をついているのでいずれバレた時、相手の人は傷ついて結局上手くいかない事は分かっているので」と答えた。
電話で由美さんはかなり逆上していて信じてもらえそうにないので拓哉も交えて会って話をする事にした。
後日、山岡由美さんの家に行くとなんとご主人がいた。しかもアメリカ人だった。拓哉ももちろん同席した。
話によると拓哉と由美さんは半年位前に知り合って2ヶ月位前からお付き合いをしていてそれがきっかけでご主人とは離婚話が進んでいて近くアメリカに帰るらしい。
由美さんは拓哉から独身と聞いていたらしくご主人と別れた後はいずれ拓哉と結婚するつもりだったようだ。
私は「離婚する話は一度も出たことが無い」と言ったが信じてもらえなかった。
拓哉は「今から離婚するつもりだ」と私の前で由美さんに言ったので一応はそれで話がついたことになった。
後から拓哉は由美さんに気づかれないように私にこう言った。
「由美はきつい性格だからああ言わないと収まらないから」と。
私は呆れて言葉も出なかったが子供達を夜、家に置いてきたことが気がかりだったので直ぐに家に帰った。
拓哉はもちろん私と一緒に帰るとは言わなかった。
私はもう拓哉の事はどうでもよくなっていた。
そしてこうも思っていた。
由美さんとはいずれは上手くいかなくなるだろうと。
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