第2話 家

「家」


かつて

家族がいて団欒があった

明かりをつけ夕げを囲んだ

笑いがあり喧噪があり

小さな幸せが包んでいた


かつて

子供がいて門出があった

父は背中を押し

母は涙をこらえた

桜並木が続いていた


かつて

宴があり集いがあった

家族は都会の花嫁をもてなした

しかし若い夫婦は居着かなかった

生きるための束縛に勝てなかった


それから

弔いがあり誰一人いなくなった

閉ざされた門戸は二度と開かなくなった

それでも家は家族を待ち続けた

何年も何年も待ち続けた


そして

時間が立ち止まった

新緑がまぶしかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る