第3話 接触

 ホタルは、マンションの部屋を出た。


 そして周囲を見回す。


 マンションは12階建て、中空吹き抜けで中庭のある構造、ホタルの部屋は9階にある。だが静かすぎる、人の気配が感じられない。


 ホタルはエレベーターに足を向けた。


 玄関を出たすぐ先にエレベーターホールがある。ホタルは下ボタンを押したが反応がない、よく見れば階表示が消えている、どうやら稼働していないようだ。


 ホタルは吹き抜けに戻り、視線を右上に向ける、すると上階の一部分が大きく崩壊していた。


 実はホタルの住まうこのマンション、現状で人が住める状態にない。なぜならば、先日の隕石群の一部がマンションに落下し、上階にあった水素燃料電気システム、太陽電池蓄電システムなどのインフラが完全に破壊され復旧の目途が立っておらず、住民全員が避難退去していた。現在マンションには、1階の警備管理室以外無人の状態だ。


 ホタルは階段で階下に降りていく、警備管理室の前を通るとき警備員に驚かれ「なぜ居るのか?、どうして避難していないのか?」と言われたが、ホタルは無視して出ていった。

マンションを出て、すぐ近くの駅へと向かう。自動改札機を通り、ホームで待つこと数分、国立学術院行きの直通電車(トラム)に乗る。


 車内は通学時間帯であり、学生が多い。数人のホタルと同じ制服を着た生徒が、ホタルを見てヒソヒソと囁き合っていたが、ホタルは黙って戸口の窓から外を眺めていた。


 トラムは山の方角へと向かっていく。一級河川の鉄橋を渡り、直ぐにトンネルに入る。長いトンネルだ、途中いくつかの山間の地上駅で客を乗せつつ、さらにトラムが進んでいくと、突然開けた場所に出た。


 鉄橋を渡るトラム、下方には大きな湖、ダムがあることから人口湖だ。

 トラムの進む湖の対岸に建造物群が見える、鉄橋の先にはまたトンネル。トラムは再びトンネルへと入った。


 トンネルに入ってすぐ、トラムはいくつものホームが並ぶ大きな地下駅にたどり着いた。各方面からもトラムが次々と発着している。降りてくるのはほぼ学生、そこは国立学術院本院のターミナル駅


 『国立学術院』

 下は3歳からの初等部12年、高等部5年の課程がある。サガミノ国技術教育庁が運営する学徒育成のための学び舎。普通は高等部5年で大学卒相当の卒業となるが、望む者があればその先の修士院での研究や、博士号を取得するということもできる。

 法学、経済学、歴史学、農学、生物学、化学、宇宙物理学、体育、生体医学、等々、あらゆる学問がほぼ網羅されており、この国の教育は国立学術院本院と国内5つの分院に全て集約されている。

 学費は国費や企業から出るので完全無償、修士を選択すると、若干の学費が発生するが、研究者自ら企業にスポンサーを求めるか、研究成果と論文を国へ収めることで全額還付される。

 その際、研究・論文は国に管理されることになるが、著者、発明者は一生涯保証される仕組みだ。

 また、インフラや福利厚生が充実しており、遠方からの学生や学術院関係者のための寮も完備され、物流システム、娯楽施設、ホテルなどの宿泊施設までもが備わる。

 学生は自国8割、同盟国留学生2割、職員含め2万人弱が、この学術院に在籍している。


 ホタルは改札を抜けて地上に出た、そこは三方を山に囲まれ、大きな人工湖を中心に豊かな自然の中に学院が広がっている。山の中にあって、まさに学園都市の様相を呈していた。


 高等部学舎へと向かうホタル、トラム内と同じように、誰も彼もがホタルのことを見てヒソヒソと囁き合っている。


「行方不明のあの子だよね」


 とか聞こえて来る。


 高等部のゲートまで来ると、門の前に立つ教員がホタルを見てギョッと驚き、すぐさま駆け寄って来た。

 教員は、立ち止まって見ている周りの生徒達に対し、怒鳴った。


「教室へ早く入れ!」


 教員はホタルを促し、教職員室へ連れて行った。


 …


 教室は騒然となっている、早速ホタルの話で持ちきりだ。


 そんな喧騒を、教室真ん中最後尾席で黙って眺めていた一人の男子生徒は、前に身を乗り出すと、前席の男子生徒の背中を指でつついた。


「なあなあ、なんの騒ぎだ?」


 つつかれた体格の良い角刈り男子生徒が振り返る。


「ああそっか、お前さん1週間前に転院してきたばかりだから知らないのか」


「?」


「クロエって女子がこのクラスに居るんだが、2週間ぐらい前から登校してこなくてな、まあ、1、2週間休むなんて、よくあることだけど…流石に連絡なしじゃ事件に巻き込まれたんじゃないか?ってな、そうしたら今日登校してきたらしい」

「ふーん、どんな奴?」

「…どんな奴って、そうだなー、結構かわいい…かな」

「へー」

「だからと言って、手を出すなよ?、彼氏がいるからな、転院生」

「そりゃまたご忠告どうも、手なんか出さないよ。それより俺の名前は『転院生』じゃなくて拝螢オガミケイだ、そろそろ覚えて欲しいなー、田荘健二タドコロケンジ君よ」

「おう悪い悪い、オガミちゃん」

「ちゃんはいらねーよ」

 ケンジははははっと笑った。


 教職員室、

 ホタルを取り囲む先生達、その中で、眼鏡をかけた年配女性が先立って話しかけてきた、彼女はセカンダリー第二学年主任の天海アマミ先生だ


「さてクロエさん、此度の事情を聞かせて下さい」


「事情とは?」


「連絡がつかなかった事よ、どうして此方に連絡いただけなかったのかしら?」


 ホタルは黙ったまま、じっとアマミを見つめている。答えないホタルに対して、アマミはため息をついた。

「…お父様と連絡が取り合えない事情はこちらも察してはいますが…」

 アマミの言葉にホタルが反応する、父”黒江了爾クロエリョウジ”に、なぜ連絡できない?と、ホタルは思考するが、


「クロエさん?聞いてますか?」


「聞いている、続けてくれ」


「…こちらからは貴方に全く連絡が取れないし、ご自宅のマンションには入れない、我々もどうしていいのかわからず、2週間経ちました。さすがにこれは異常と判断して、これから警察に相談しようと考えていたところです」


「…なぜ父親と連絡が取れない」

 そう質問を返してきたホタルに、アマミや他の教師達が、訝しげな顔をする。

「……それは、あなたがご存知でしょう?」

「……」

ホタルは黙ってしまった。対してアマミはため息をつく。

「貴方の家庭の事情に関して、学院から口は挟めません」

「家庭の事情…」

「それよりも、今まで何処にいたのですか?、連絡もせずに」


「一身上の都合だ、答える必要はない」


 ホタルの言葉にざわめく教師たち


「クロエ!、何だその口の利き方は!!」


 そう怒鳴ったのは、ホタルのクラス担任、橋田ハシダ先生だ。


「ハシダ先生、落ち着いて下さい」

 そう言いつつもホタルをじっと観察するアマミ。ホタルも視線をそらさず、ただ黙ってアマミを見ている。


(この子…一体どうしちゃったのかしら…)


クロエホタルという生徒は、口数は少ないが成績は上位、それなりに優秀で、教師に反発する様な態度は取った事がない、行事にも率先して取り組み、教師達からも覚えがいい、アマミはそう認識していた。


 しかしアマミは、そんなホタルの視線に違和感を覚えた。まるで何かを見定め、試そうとしてるかの様な目に…


「わかりました、どこに居たとかはこちらは詮索しません。事件ではないのですね?」


しかし、ホタルは逆に食いついてきた。


「事件の定義が不明瞭だ、あなた達は何をもって事件と言っている」


「クロエ!」


 ハシダが前に出ようとしたのを、アマミが手で制した。


「そうですね…連絡もせず、行方不明だった…というところですね」

「そうか、だがそれは個人的事由によるものだ、事件性はない」

「クロエ!、お前いいかげんにしろ!!」

「ハシダ先生、これはクロエさんのプライバシーに関わる話です。事件性がないのであればこちらがとやかく言う必要性はありません」

「それはそうですが……」

「ただ、学校を休む旨を連絡していただけないと、こちらも対応に困ります、その点はお分かりですか?」

「理解はしている」

「では、なぜ連絡をしなかったのですか?」

 ホタルはチラッとアマミの横に立つハシダを見て、説明をする。

「担任であるハシダ教員に既に連絡してある、20日前に2週間休学したいと既に申請を出している」


「えっ?」


 これにはハシダは愚かその場にいた教師全員が驚く。アマミはゆっくりとハシダに向いた。

「ハシダ先生?、私は聞ていませんよ?」

「そ、そんなはずは…」

ハシダは慌てて自席に戻り、タブレットを開いた。

「メールは3回送信している、返信が無かったからな。そのあと私の携帯電話が使用不能となったので、受理されたのかは確認できていない」

 ホタルはハシダには目も合わせず、そう説明する、彼は慌てて、青ざめた顔をしてメーラーをスクロールさせて行く。日付を遡ると、未読のメールを3件見つけた、それはまさしく彼女の言う20日前のホタルからの休学届けのメールだった。

 内容は、今ホタルが説明した通り、”一身上の都合により”と書かれている。


「え??、あれ?、そ、そんな……」

「ハシダ先生?」

 優しそうなアマミの声色が変わる


「いや、こ、これ…お、おかしいな…」

「やれやれ、どうやら此方の不手際ですね、ごめんなさいクロエさん」

「問題ない」

 そこにハシダが慌てた様子で喋り出す


「し、しかしだね、君の所属する天文部部長の話しでは、隕石が落下したあの日の丘に、1人で天体観測に行っていたかも知れないと言っていたんだ…」


「何が言いたいのか分からない、メールは今あなたが確認したはずだ」

「あ、いやそうなんだが…」

「ハシダ先生、もういいでしょう、この件は終わりです、朝会が始まります、貴方は教室に行きなさい」

 ホタルは、踵を返しその場を後にした。そんな彼女の後ろ姿を見送るアマミ


「…それにしても、クロエさんはあんな感じだったかしら?」


 …


 ホタルが教室の戸を開けるとその視線が一斉に彼女へと向く、一瞬静まりかえり、すぐに大きなざわめきへと変わった、ホタルの出現に教室中が騒然となった。


 ホタルは教室を一瞥すると、すぐそばにいた男子生徒に声をかける。

「私の席はどこだ」

 自分の席の場所を聞いて来るホタルに男子生徒は何を聞かれているのか分からず、しばらくポカンとホタルの顔を見ていた。

「聞いているのか」

「あ、い、いや…」

 男子生徒は慌てて、席の場所を指差した。

「あそこだけど?…」


「ホタル!」


 前方席中央に座っていた女子生徒が、席を立ちその名を呼んだ、しかしホタルはその女子生徒をチラッと一瞥を向けるだけで、彼女の前を通り過ぎて行く。


 オガミケイは、教室に現れたその女子生徒を見て、オッと身を乗り出した。

「なるほど、たしかに可愛いな…」

ケイがボソリと呟くと、前席のケンジが応える。

「だろ?、でも彼女、コミュ症なんだよな、気の合う奴としか話さないんだ」

「ふーん、そうなんだ…」

ケイは、ケンジの言葉に頷きつつも、彼女の言い知れぬ異様さに気づいた。


「……でも、なんだアイツ、まるで気配がない?」

 ケイは視線だけで歩いて行く彼女を追う

「ナニ者なんだ?」


 ホタルの席は正面電子黒板側を向いて左手窓側、前から2番目、その席に着くホタル、無視された女子生徒はホタルのもとへ向かおうと席を立とうとしたが、そのすぐ後から担任のハシダが教室に入って来たので席に座り直した。直ぐに係の生徒が号令をかける。


「起立…礼!」


 皆、ざっと軍隊の様に立ち上がると、一矢乱れず、お辞儀する。

 この国での、小さいころからたたき込まれる教練の賜物である。


「直れ、着席」


 ハシダは教室を見回し、ホタルを一度見てから口を開いた。

「あーみんな、おはよう、先ずはクロエさんのことなんだが…」


 ハシダからホタルの事について説明がなされた。

 当人から欠席の連絡が事前にあったこと、学校側(担任)がそれを見落としていたこと、全生徒に対し余計な心配と不安煽ってしまったこと、ハシダは謝罪をした。

 その説明に教室中がざわめいたが、すぐに収まった。


「と、いうわけで皆はこれ以上この件で騒がないように、わかったな」


 その後は本日の連絡事項が伝えられ、朝会が終わる、ハシダが教室を後にすると、ホタルのもとに先程の女子生徒が駆け寄って来て彼女の手を握ろうとする、が、ホタルはさっと手を引いた、すかされた女子生徒は顔を顰めた。


「もう、ホタルー心配したよー」 


 この個体は…と、ホタルは分析する

 財前霞ザイゼンカスミ

 第一剣道部、副部長

 両親と兄、4人家族

 ホタルは情報を拾い集め始めた。対して、じっと見つめてくるホタルにカスミは首をかしげる。


「どうしたの?」

「…」

 ホタルは黙ったまま答えない

「もうさー、携帯も繋がらないしさー、しさー、2週間もどこにいたのよ?」


「…ニッポン国」

 ホタルは、なぜかそう答えた。


「え?ウソ、マジ?、誰と?」

「1人だ」


「私も大会で何度か言ってるけど、シブヤとか、ハラジュクとか行った?」

 シブヤとハラジュクがなんたるか、ホタルにはわからなかったが、をかけると、どうやらニッポン国の若者が、娯楽目的で行く街らしい。


「ニッポン国に何しに行ってたの?、リョウジさんは知ってるの?」


 とカスミは言った。


 ホタルの父親を名前で呼んだカスミ、親しい間柄でなければそんな呼び方はしない。だがホタルの中の情報には、父親リョウジとカスミを結びつけるモノが確認できない。


「…情報量が少ないな」

 ホタルがボソリと呟いた

「え?」

「貴方はなぜ、私の父親を”リョウジ”と呼ぶ」

「は?、ホタル、何を言ってるの?、そんなの昔からじゃん、大丈夫?」

「昔から…」


 ホタルは状況を整理する。今までのアマミや、ザイゼンカスミとの会話から推測するに、クロエホタルは、父親クロエリョウジとの関係に、なんらかの疎通があると解釈した。

 更には連絡がつかない、それはどう言う事なのか?、保護者たる父親が、2週間も欠席していた事を知らないとは……なぜ、と。


「……リョウジさんも素直じゃないんだから」

 と腕を組みカスミは独言ひとりごちしていたが、ホタルに見つめられて、ハッとすると…


「あ、ごめんホタル」


「なぜ謝る」


「だってリョウジさんの事は、口にしないって、ホタルと約束してたじゃない……」


『約束』

 ホタルは思考する。

『約束』とは、当事者間での決められた事を遵守すること。

 …ホタルは口をつぐんだ


「それにしてもホタル、なんか雰囲気変わったよね?」


「…変わった、とはなんだ」

カスミはシゲシゲとホタルを品定めするかのように眺める。

「髪型?、は同じか、メイクは普段からしないし…アレ?、そういえば眼鏡は?」

「眼鏡…」

 今のホタルにそれは必要のないものだ、答えがない

「あ、コンタクト?」

 とカスミが聞いてきたので

「そうだ」

 ホタルはそう答えた。


 しかしカスミは会話しながら、ホタルに別の違和感を覚え始めていた。


 実はカスミとホタルは幼馴染、幼少の頃からの付き合いだ。ホタルは元々口下手で、不器用、人と距離を置きたがり、いわゆるコミュ症。そしてある時期を境に、更に口数が減り、あまり笑わなくなってしまった。

 セカンダリーの高等部に上がってからは、より拍車がかかり、同級生など、他人との付き合いはあまり広くない。唯一気軽に喋る友達と呼べるのは、カスミと同じ幼馴染でもある、ホタルが所属する天文部の部長ぐらいだった。


 カスミはジーとホタルの目を見つめる、深く黒い瞳の奥底に宿る、不思議な光を感じ、カスミはブルリと震えた。


ホタルは何気に人気がある。ビジュアル的には美人の部類に入る。憂を秘めた感じがいいのか、男子間ランキングでは高等部上位に入っていると天文部部長からカスミは聞いていた。


「なんかもういろいろと嫉妬しちゃうわ、ホタルってば」


 と宣うカスミ。一方で、ホタルはカスミの言っていることが抽象的過ぎて、まるで理解できないでいた。だがザイゼンカスミという人物が、自分よりも自分のこと事をよく知っていると認識した。欠損情報の補完には最適な人物になり得ると、ホタルは判断した。


「まあいいわ。ねえ、この間約束した駅前のカフェ、今日行かない?」

「他にも約束事があるのか…」

「忘れちゃったの?、ケーキよケーキ、駅前”シャロム”の期間限定パンプキンシフォンケーキ、今日が最後。…でね、偶然にも今日は部活がお休みになる予定なのよねー」

 ニッと笑うカスミ

「部活動…剣道か、部活動は毎日あると認識してるが」

「副部長の私が居なくても部活は回るわ」

「回る……」

「今日行かないと食べられなくなっちゃうし、約束してたのにホタルいなくなっちゃうしさ」

「…約束は守らなければならない」

「え?」

「わかった、同行しよう」

「ヤった!」

 とカスミは右掌の平を立て、ホタルに向けてくる

「…」

 ホタルはニコニコする彼女の顔を見て、自分の手を見た、カスミと同じ様に手を出すと、その掌にカスミはバシッと打ち合わせた。


そんな会話をしている2人に近寄ってきた人物がいる。


「ホタル」


 と、後ろから名前を呼ばれ、ホタルは振り返った。


「あ、やだやだ来たキモオタ」

 カスミが不機嫌な顔をする


「誰かキモオタだ」


ホタルは情報検索する。


 比嘉歩ヒガアユム

 天文部、部長

 両親と妹2人、5人家族

 自分はこの人物の天文部に属していることになっていると、ホタルは情報を収集した。


 天文部…モノだ


 ジッと見つめてくるホタルに、アユムは目を細める。


「ホタル、昼休み部室に来てくれ」

 と言った。


 ケイは彼らのやり取りに耳を傾けていた、会話を聞いていると、クロエホタルと言う女生徒、その感情にまるで抑揚がない。それにやはり気配を感じ取ることが全くできない。

生き物である以上、そこらの草花でも小なりに生命エネルギーを放っている。

特殊な訓練を積み、意識を閉じることができれば気配を消す事は出来るが、気配を完全に断つなど不可能に近い。


それ以外となれば……


「まさか死人リビングデッドか?」

 とケイはボソリと呟いた


 昼休み、天文部部室

 呼び出されたホタルは、アユムと2人だけで向かい合っていた。


「ホタル…今までなんで連絡をくれなかった」


「連絡……なんのために?」

「なんのためにって…約束したよな?、顔を合わせなくても、電話でも毎日会話するって、それに、あの日あそこで天体観測していたのか?、雨が降るから中止って言ったよな?」


「あの日とは?、あそことはどこのことだ?」


 アユムの詰問に対し質問で返すホタル、彼は苛立つ様子をみせた。

「これはホタルがあの日、あの時間、あの神社にいたと言う携帯の位置情報だ!」

 アユムは携帯電話の画面をホタルに向ける、それは地図とマーカーだった、日付けは隕石群落下の当日、時間は19時48分、場所はアマミシトド神社。

「ここは隕石の落ちた場所だ!、この時間はまさにその時間!、神社の宮司さんとは連絡が取れないし、気が気じゃなかったんだ!、先生に言っても「被害者はいない」と取り合ってもらえないし!、いったい今までどこにいたんだよ!」

「神社の……宮司…」

 ザッと、一瞬女性の顔が視界に現れ、ノイズのようなものが視界を走った、ホタルは目眩を起こし、右手で顔を抑え机に手をつこうとしたが、つき損ね、イスをひっくり返し床に尻餅をついた。


「ストレージが安定しない…」

 ボソリと呟くホタル


「だ、大丈夫かホタル?」

 アユムが慌てて駆けよった


 『情報』と『記憶』、2つの相容れぬソースが脳内で渦巻いた。

 

 地球大気圏への突入

 撃ち抜かれ、破壊された本体

 大気摩擦、分解

 地上への落下

 消失して行く『情報』

 ……

 生命個体の姿…

 ……

 空を覆う流星雨

 迫る火球

 衝突

 消えゆく生命反応

 『記憶』の消失

 消滅

 ……

 2つの残留思念の邂逅

 残存マテリアル回収、DNA解析、修復

 生体再構築

 個体再生…『情報』と『記憶』の修復

 ……失敗


 ホタルはしゃがみ込みしばし固まっていた、我にかえると、アユムがいつの間にか肩を抱いていることに気づき、その手を払い除け立ち上がった


「…私に触れるな」


「なっ、なんだよその言い草は!こっちは心配したんだぞ!、携帯は繋がらない、連絡もよこさない、2週間も!」

「携帯は壊れて現在は所持していない」

「そんな事聞いてるんじゃない!」

 机をバンっ!と、叩くアユム

 この個体がなぜ憤慨しているのか、ホタルは理解できなかった

「貴方は怒っているのか?、なぜ怒っている?」

「見て解らないのか!、誰のせいか自分の胸に手を当てて考えてみろよ!」


自分の胸に手を当てる?


「……理解不能、他に用がなければ失礼する」

「なっ、なんだよ、なんなんだよ!」

 ホタルは扉を開けて廊下に出る

 アユムはホタルを追いかけ、後ろから彼女の右肩掴んだ


「まだ話しは終わっていないぞホタル!、僕は…」


 ホタルが反応する、それは自己防衛のために。

「!?」

 ホタルの右手がアユムの首をわしづかみにし、壁にたたきつけ、そのまま宙に吊り上げて行く。


「がはっ!!」


 ホタルの華奢な腕からは想像もつかない膂力が発せられ、ギリギリと喉笛を握り潰されそうになるアユム


 ホタルの黒目の奥が赤く光っていた。


「ぐ、ぐるじ……」

 アユムは苦しさと激痛に、足をばたつかせもがいたアユの顔がみるみるうっ血していく。


 その時、そのホタルの手首をいきなり何者か横から掴んで来た、ホタルが横を向くと、それはオガミケイだった。

 彼から凄まじいまでの気の放出を捉えたホタル。


「おいおい、それ以上は止めとけそいつが死ぬぞ?」

 ケイはホタルの親指の付け根を押し込むように捻ろうとした、しかしホタルは逆らわず力を抜きアユムから手を離した。


「(へー、折るつもりだったんだが…)」


 ケイもホタルから手を離した、解放されたアユムが床に崩れ落ちた。

「お、おい、大丈夫か?」

 ケイはしゃがみ込みアユムの様子を伺った。口から泡を吹き気を失っている。死んではいない。


「おいお前、これはやり過ぎだろ?」

 とホタルを睨み見上げるケイ、しかしホタルは無言で見下ろしてくるだけだった。


「(なんだこいつ、こんな華奢な癖に男1人片手で持ち上げるとか、どんなパワーなんだよ、本当に不気味な奴だな)」


「(この個体は何だ?、接近にも気づかなかった。今アクセスできる情報には出てこない…)」


 お互いそれ以上言葉も交わさず思考し合っていたが、ケイはアユムをおぶって立ち上がった。


「クロエホタルだっけか?、俺はオガミケイ、この間ここ本院高等部に転院してきたばかりだ。ちなみにお前のクラスメイトだ、覚えておけ」


 そう言うとケイは立ち去って行った、立ち尽くすホタルが改めて調べると、学校の最新データベースに情報があった。


 拝螢オガミケイ

 7日前に転院

 同学年

 同クラス

 転院前情報、なし

 ホタルは他の情報を拾おうとするが名前からは何も出てこない


 保健室にアユムを連れていき、遅れて午後の授業に戻って来たケイ。ホタルは何事もなかったかのように席にいる。クロエのことは伏せアユムの事を先生に説明して席に着いた。

 すると、ケンジが振り向いて囁いてきた

「どうしたんだよ?」

「うんこが出なかった」

「そりゃ災難だな」

 ケンジが苦笑した。


 それからは何事もなく、その日の最終授業開始に、ようやくアユムが保健室から戻って来た。まっすぐケイの元まで来て頭を下げた。


「大丈夫か?」

「う、うん、ありがとう大丈夫……」

 アユムの首には痛々しくうっ血痕が残っていた。ケイは前方のクロエをちらっと見た

「黙っていた方がイイか?」

「うん、お願いするよ……」


 アユムはその後、ホタルの方をチラチラとみながら自分の席に行くが、彼女はアユムに興味がないのか目も合わせない、アユムは項垂れて席に着いた。


 最終授業は社会、授業がはじまる。

講義内容は、地球を取り巻く環境問題だった。

……

授業はつつがなく進み、終業の間近、電子黒板に直ぐ向いていたホタルは、自分の左肩越しに後ろから飛んできた小さな物体を、右手ではしっと掴んだ、チラリと後ろを見るとケイがニコニコしながら、それを開けとジェスチャーを送って来ている、ホタルが握った手を開くと、そこには小さく丸められた紙が…、それを広げてみると、かなり小さな文字で文書が書かれていた。


 放課後

 ホタルはカスミに対し、先に駅前カフェ『シャロム』に行くよう促し、彼女自身は学校裏へと向かった。


 そこにはオガミケイが待っていた。

 ホタルは周囲を探る、他に人の動きはない、ケイはホタルの前に仁王立ちになる。


「担当直入に聞こう。お前、あのヒガアユムって奴を、殺す気だったのか?」


「…」

 ホタルは無言、ケイを観察するような目で見ている。

「だんまりということは否定しないと言うことか?」

「…」

 ジッと見据えてくるだけのホタルに対し、ケイは首を傾げた。


「お前さ、俺の言ってる事わかる?」


「言語は理解している」

「喋ることはできるんだな」

「オガミケイ」

「おう」

「授業中に背後から圧力をかけてくるな」

「へー、俺の気を感じ取れるってことは、お前やっぱりただ者じゃないな?」

「私には関わるな。度が過ぎると脅威とみなし排除する」

「は?」

 そう言ってホタルは立ち去ろうとする、が


「待て待て待て」


 と呼び止めるケイ、ホタルはピクリと何かに反応し、足を止めて振り返った。


「…今、微かな量子転移現象を感知した。何をした?」


「へっ?」


 ホタルの問いに、間抜けな声を出したケイ、その手には、何処から出したのか、漆黒の木刀が握られている。

 ホタルは、オガミケイの左手首にある緑に光っている腕輪を見た。


「貴方は、現代技術体系ではあり得ない代物を持っているな」


「なんの話だよ?」


 キョトンとするケイに対し、ホタルは彼が惚けている訳ではないと判断した。

「…もう一度いう、私に関わるな」


「いやいやいやいや、もうちょっと話しをしようぜ?」


「忠告はした」


 真正面にケイ向き直るホタルのその目の奥が赤く光り出した。ケイは、笑顔を消し、サッと半身を引いて木刀を斜め正眼に構える。だがホタルからは殺気的なモノを感じない、一切の圧力がない、攻撃の構えもとっていない、それなのに心の底から沸き上がる言葉では言い現せないモノを感じる。


『恐怖』


 ケイの頬を、汗が一筋流れた。

「なんなんだコイツ…」

 そう呟いたケイは、漆黒の木刀を強く握った


 次の瞬間、ケイは突然の衝撃を受け、気を失った。

 …


「あ、キタキタ」

 カスミは門の前で、ホタルを待っていた。

「先に行けと言ったはず」

「ホタルと一緒に行きたいの」

「そうか」

「転院生と何を話してたの?」

 ホタルはカスミを見た、

「あの時、周囲150m以内には誰も居なかったはず…何故私がオガミケイと会っていたことを知っている」

「んー感だね」

「感…」

「告られた?、ホタル昔から可愛いからさ、いつも誰かに告られてるよね?」

 とカスミは口を尖らせる


「『コクられた』とはなんだ?」


 カスミが顔をしかめた

「もう、告白されたか?ってこと」

「告白…秘密の暴露とかそういうことか」

「ホタルー、なに言ってんの?、『好きです、付き合って下さい』、とかそういう事よ

「『好き』とは好意がある、ということか」

「あたりまえじゃん、ちょっと大丈夫?」

「…そう言った類ではなかった」

「ふーん…」

 やはり、ホタルの雰囲気がいつもと違う、言葉遣い一つとっても、どこか機械的、カスミはそう感じとった。

「…ねぇカフェの後、ホタルの部屋に行ってもいい?」

「許可できない」

「えーケチ、相談があるのに」

「相談とはなんだ、ワタシがアドバイスできる事は限られている、ここではダメなのか?」

「外ではちょっと…興味あるっしょ?」

「ない」

「んもぅ、興味もてこの!」

 ホタルは考えた、カスミの相談事が欠損した自己情報の補填に役立つ事かも知れないと、しかし…

「私の居住マンションは、隕石落下の影響で現在は人の立ち入りが規制されている」

「あ、なるほど、被害が神社の次に大きな所だもんね…そっかー、わかった!、じゃあ私の家に行こう!、ママの夕飯ご馳走する、決定ー」

 と、一方的に話をすすめたカスミは、ホタルの腕に手を回し抱きついた。


 ホタルはカスミに引っ張られて、駅前にある「シャロム」という喫茶店に入った。学術院の学生御用達の店である。窓側の席に着くと、カスミが店員を呼び、早速期間限定ケーキを2つ頼む

「お飲み物はいかがしますか?」

 と店員が聞いてきた

「ホタルはいつものアールグレイでいいよね?」

「構わない」

「アールグレイとブレンドコーヒー、あとミルク付けて、サトウ無しで」

「かしこまりました」

 店員は注文を確認し、一礼すると席を離れた…

 程なくして、品がやってくる

「あはは、コレコレ、いっただきまーす」

 と言って、パンプキンシフォンケーキを頬張るカスミ

「おいっしー」

 ホタルはフォークを持ったまま、じっと淡い黄色いのシフォンケーキを見つめていた。

「食べないの?」

「…」

 ホタルは、カスミを真似て、フォークで掬い取り口に運ぶ、暫く咀嚼すると目を見開き口を押さえた。


「甘い?」


「ケーキだよ?」

 今度は、シリンダーポットの紅茶をカップに注ぎ口に運んだ。


「にがい?」


「なんで疑問形?、ちょっと本当に大丈夫ホタル?」

「平気だ」

「…なんか、変だよ…」

「どのように?」

「変なのはいつもだけど、心がないというか…」

「心か…」

「アユムになんか言われた?」

「アユム、ヒガアユム、天文部の部長か」

 カスミはホタルの物言いに怪訝な顔をする

「…アイツさ、ホタルから連絡なくて泣きそうだったんだよ?」

「なぜ?」

「なぜって…わざと言ってる?」

「『わざと』とはなんだ?」

 ホタルには理解できない言葉だった。カスミは今のホタルの問いはとりあえず無視した。

「んー、さすがの私も見てらんなくてさ、ホタルが学校こなくなって4日目?いや5日目か、ホタルがいたかもって言う神社に一緒に行ったんだ」

「神社周辺は封鎖されているはずだ」

「こっそり侵入したのよ、でも神社自体はすごい頑丈に塞がれてて入れなかったけどね」

「他は?」

「え?、他?、えーと、マンションにも行ったよ」

「それから?」

「もう、なんで質問攻め?」

「…」

「じゃあ、アユムのことどう思ってるの?」

「どうとは?」

「…ホタル怒るよ?」

「なぜ?」

「もういい!」

 ついにカスミは怒って黙ってしまった、コーヒーを飲み、目を瞑る

「わかった」

 そう言うとホタルは席を立つ

「ちょっと、どこ行くの?」

「ここを出る、貴方から引き出す情報はこれ以上ないと判断する」

「な、なによそれ!?、ちょと待ちなさいよホタル!」


「あれー?、カスミちゃん?」


 カスミは名を呼ばれて後ろを見た


「加瀬ヒロ…先輩」


 顔をしかめ、呟くカスミ

 頭をオレンジ色に染めシャツの胸を第二ボタンまで開き金色の短く太いネックレスを、首に巻くようにしている、いわゆる”チャラすぎる男”

 が、カスミの後ろに立っていた

「なーにしてんのかな?」

「お茶してんのよ見ればわかるでしょ」

「でもケンカっぽいけどなー」

「あっち行って下さいよ、部活はどうしたんですか?、全然来ないじゃないですか」

「そりゃこっちのセリフだよカスミちゃん、第一剣道部は練習してたよ?、副部長さん」

「わ、私は今日は休みなんです」

 そんな2人の会話をよそに、ホタルは立ち去ろうとする。

「待ってホタル!」

 それを呼び止めるカスミ

「おや?、そっちはホタルちゃんじゃないか、相変わらず可愛いねー」

 ホタルは名を呼ばれ振り返る


「貴方は誰だ」

そういいつつも、ホタルは学院のデーターベースにアクセスしていた。


「やっだなーホタルちゃん、ヒロだよ、カセヒロ」

 

 加瀬カセヒロ、

 高等院第4学年、

 第二剣道部、

 両親と妹1人、

 4人家族、


 だが、自分との接点はないとホタルは判断した。

 そんなホタルにカセは近づくと彼女の肩に腕を回した。


「折角だから3人でお茶しようよ?」

 と、カセはニヤニヤしながら言う


「ちょっと、やめ…」

 カスミがホタルからカセを引き剥がそうと手を伸ばしたが…

 それは一瞬のことだった


 どがぁぁん!!


 カセはウッドテーブルの上に顔面を叩きつけられていた、その後頭部をホタルが手で押さえつけている、その手を離すと、彼はテーブル上に2本の鼻血の線を引きながらズルズルと床に崩れ落ちた。周囲の客達は何事かと見ている。

 呆然とするカスミ、ホタルを見ると冷ややかな目でカセを見下ろしていた。カスミは、ハッと我に還ると、テーブルにある電子マネーピッカーに携帯をあて、2人のカバンを手に取り、ホタルの手を引いて慌てて店を出た。

 …

 駅まで走り、改札を抜け、発射予鈴の鳴っているトラムに飛び乗る、乗り込むと同時に扉が閉まり、ホームドアも閉じる、そしてトラムはゆっくりと走りだした。


「ああ、ビックリした、もう、なにやってんのよホタル!!」


「障害…いや、邪魔なので排除した」

「邪魔?、排除って…え?」

「文字通りだ」

 カスミは唖然としていたが……


「…ぷ、はは、あははははは、やりすぎ、やり過ぎだよホタル」

 お腹を抱えて大声で笑い出すカスミ、周りの乗客がなんだなんだとカスミ達2人を見ていた。


「大丈夫だ、彼は死んではいない」


「くくく」

 カスミは涙を流し、口を押さえて笑いを堪えている

「何がおかしいのか理解できない」

「私も、もうわかんない」

 カスミは笑いが止まらない

「わかんないけど、ホタル、何かが変わっちゃったんだね、いなくなってる間にいったい何があったの?」

「……」

「まただんまり?」

「言っても貴方には理解できない、故に話すつもりはない」

 カスミは少し寂しげな顔をした。だけど深呼吸をして笑った。

「…わかった、話す気になったらいつか話して、今は聞かない。私は何があろうとホタルの味方、ホタルの友達」

「友達……」


カスミは心の中で決心する。

「(ホタルに何が起きたのか今はわからない、でももう、のような間違いはしたくない。ホタルを守らなきゃ)」


 ホタルは表情一つ変えずカスミを見つめた。対してカスミは微笑み、ホタルを見つめ返した…しばらくそうしていた二人だったが、突然カスミはがっくりと肩を落とし、ため息をついた。


「……はぁ、でもアレは不味まずいかも…」


 カスミは上目遣いでホタルを見る

「何か問題か?」

「ホタル知ってるでしょ?、あの人たしか『フーリガン』なんだよね」

「フーリガン?」

 …

……


「はっ!」


 ガバッ!、と、土くれと共に跳ね起きたケイ、既に日が落ち夜になっていた…後頭部の痛みに顔を歪めた。


「いてぇ、くそっ何が起きた…」


 気を失う直前、迫る手の指の隙間から覗く紅く光る目のホタルの顔が、残像の様に記憶に残っている。一瞬の内に顔面を掴まれ後ろに倒れた、いや倒されたのだ。ケイは後頭部をさすりながら上がり、自分が倒れていた場所を見る。 

 地面が頭の形に抉れている、其処は花壇の様な所で土が柔らかくなっていた。コンクリートか硬い地面だったらと想像し、血の気が引く。

 辺りを見回すが、ホタルの姿はない、ケイは、地面にめり込んだ木刀を拾い上げると、ガックリと肩を落とした。


「くそっ……アイツの動き、まるで見えなかった」


 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る