あたしも最初はこうだった

「あのね、美空さん」

彼女は腰をおちつけ、上体を乗り出した。そして艦になった直後の心情を語り始めた。

確かにショップ店員から物々しい航空戦艦になった時は興奮していた。


そのときは「やるからにはやる」「やりたいからにはやる」

そういう意識で頑張ってきた彼女だけれど、最近では「やりたいからにはやる」と考えるようになった様子。


千里は続ける。


「義務感は薄れる。だからやりたいことをやり続けるのが一番いいと思う」という。


「やりたいからには、それを自分でやらないと、本当にやりたいことが見つけられない」と思うほど、やるからにはやることが多い。


「意識高い系のことかしら」、と美空。


「ええ、そのような『やりたいからにはやる』感を表現するキャッチコピーも、『私には好きなものや得意なものがたくさんあって、それを生かすことができた』と思えたときに、やっぱり私は、やりたいと思えるんだろう」という。

「そんな…毎日が遊園地のようだったら造作もないです。でもあたしは籠の鳥です」

美空は万能でありながら縛られた状況を訴えた。

その気になれば大艦隊を蹴散らして宇宙の果てに王国を築けるのに。


すると千里は頷いた。


「それを大切にしていけば、もっと楽しいはず」というような“やりたいからにはもっともっと楽しいことが見つからなくてはならないと思う”という強迫観念が狭い道を決めているという。


さらに、これからも「私は、これからも「やりたいからにはやりたくない」っていう気持ちはあります、と本音を漏らした。


「産直センターで働いてたことと兵站の仕事を強引に関連付けた?」

「ねぇあなた、確かに無理やりだとおもうわ。でも、私はそれを『やらない』という考え方にはしない」

いわれて美里は身を乗り出した。


「私も自分のやりたい仕事ができなかったので。やりたい仕事は、自分で見つけても、自分の心が満足できないままでいいと思うし、自分で納得できるまでやっていけば、いつか自分の人生も変えられるわ」

千里はキッチンの鏡に顔を映した。憂いたというより諦観をやりがいに変えようとする表情。


「 でも、何かをやるには、きちんと心のあり方を聞いて、自分の気持ちに素直になる気持ちを持つ必要がある気がする」


仕事で失敗したくない自分を、「やれるだけやらない」という気持ちが大切だと思う、と述べた。


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