自分の幸せには、他の人の幸せも繋がればとの思い

自分の幸せには、他の人の幸せも繋がればとの思い、「お母さんを守る人を見つけたら、私が代わりに助けてあげよう」と思って書いた。

自分と彼女、そして息子の幸せは、どう生まれ変わるのだろうか……

「人生が楽しい人が幸せになれる!」そう思って書いたことはなかなか、なかった。

だから何も迷いはなかった。

「誰しも幸せになれて、誰もが幸せになれる自分の人生。幸せの道を歩く私」

そんな当たり前のことが、この本には書かれている。だけど見えてこない。


「こんな自分は嫌だ」

居ても立っても居られない。

川べりに降りた。ざぶざぶと膝まで水に浸かりながら、橋脚のたもとへたどり着いた。原稿用紙が抜け殻のようにたゆとう。


力づよくも、ただただ吠えるだけでむなしい。

やさしくも、めそめそ嘆くだけよそよそしい。

そんな書き文字達が虚ろな恋をさがしている。


「そんな彼はもっと嫌だ」


彼は濡れた紙を丁寧にひろい集め我が子の様に大事に抱えた。そして天を仰ぐと何かに突き動かされるように自宅へ駆け戻った。


それから半年後、放課後等デイサービスのレクリエーションタイム。

自分の物語を読み聞かせる彼の姿があった。

「先生、続きは? こーそーちゅうなの? それともすいこーちゅう?」

羨望のまなざしに大人らしい、大人しかなしえぬ、大人だけの恋があった。






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蛍雪時代 水原麻以 @maimizuhara

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