RUSH MORE
グランベリーの庭に溢れかえる子供たち。過剰な人口密度が限界に達する。
押し合いへし合い、おしくらまんじゅうで圧死者が出そうだ。
この異常な人口集中は逆説的に整理整頓を要求する。
「こうなると自律より部外者の命令が要る。『片付けろ』『片付けなさい』」
「『片付ける』、これがないと『片付けが出来ない』、そう言えばいいのね」
私は納得がいかない。この子らに保護者がいれば強力な指導ができよう。
だが、どこから連れてくる。それが出来ねば子供らは死ぬまで騒ぎ続ける。
「…ですが、おかしいです。先生。最終的に事態の収拾を神に依存する事になります。それでは『片を付ける』という言霊の自動詞が否定されてしまいます。片付けようが片付けまいが、万物は朽ちてなくなるのです。整理整頓なんて無意味です。」
「そう、つまり、『片付けが出来ない』なら、ここに居させたいと思うものだ。『片付ける』は『片付ける、しなさい』。『片付けさせずに手伝わせろ』という風に分解可能だいうものだ」
先生の手がいつの間にか私の腰のまわっている。私はスカートを整えるふりをして椅子を動かした。
『片付ける』という言霊は自動、他動、そして新たに媒介する作用素を持つことまでは分かった。が、第三の機能は自己撞着を招いてしまう。
さっき先生は私自身が『片付ける』系の参加者として作用していると言った。
それならば結局、
「でも……それじゃあ私。何も出来ないわ」
私はそう、言い掛けた。
すると、クランベリーさんが何か言いたげな顔で私を見て、言った。
「何だ? 言いたいことがあるならはっきり言え。言いたいことが分からなければ…」
先生が襲い掛かる。私の服に手を差し伸べる。とっさに私は身をかわし、虚空に浮かぶ小穴を握りしめていた。ずっしり重い。
『片付ける』という言霊が私たちの働きかけで臨界に達している証拠だ。
片付けるが暴走すると、拒絶、闘争、戦乱、そして滅亡をまねく。
そうなる前に究極の『カタを、つけねば』
先生が足払いをかけた。私は転び、裾がめくれ奥まで見える。グランベリーはそこに釘付けになっている。
私は彼の後頭部めがけて腕を振り下ろした。
何かがぐしゃりと潰れた。
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