グランベリーの庭
私は同時に激しい違和感をおぼえた。
「この子たちは…先生は生涯独身が主義でしたよね?」
「俺を失望させるな。教えたことをもう忘れたか」
……あ、そうか。そうだった。『片付ける』動詞の別解釈。
「仲介する要素。先生が発見した『片づけをしてくれる人』というのは…」
「鈍感な奴め。今ごろ気づいたか。お前は言霊の作用素として体系に参加している。いや、傍観者である俺もそうなんだが既存のアカデミズムは言霊術における包括的な視野そのものを独立した一個の主観とみなしてなかった」
これが世紀の大発見だということだ。
のちに先生の名をとってグランベリーの庭と呼ばれるようになる。
「先生、この子たちって何なんですか?」
私は無邪気に遊びまわる子供たちに母性本能をくすぐられた。
「こらこら。母親みたいな顔をするな。前に教えたろう。忘れっぽい女だな」
叱られてようやく思い出した。言霊の要素は世代でなく従属した関係を派生する。
「主体における垂直な慣性ですか?」
「そうだよ。兄弟姉妹の関係だ」
この子達は私の、本当の『弟』なんだった。
私たちが一緒に居るということは、この子達もこの中にいる子達もそこに居る『弟』を見つけたらしい。垂直な慣性が直交する関係を提出する。
それは自動的に要素を増殖していくが、どんどん増えて飽和状態になる。
グランベリーの庭は子供たちで溢れかえっている。
「整理整頓する理由が生じる。片づけをする依頼がないからだ。仲介業務が持て余すとこうなる」
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