葛藤

しかし、わたしは責任ある立場にある。

いくら丁重に扱われようと、どんなにぞんざいにされようと、わたしはお客様に対して公平であらねばならない。


人が死という運命から逃れられないように、わたしも担わされた役割を放棄する事はゆるされない。


時にはお客様に無慈悲な現実をつきつけなければならない。


それが、どんなに辛いことか。断腸の想いで伝えなければならない真実がある。


「うおおおおおおお!」


突きつけられた回答にお客さまは狼狽え、嘆き悲しみ、時には吼える。


わたしだって叫びたくなる。お客様の行く末に同情と怒りを禁じえない。

張り裂けそうな胸中を口にすることはできないのだ。



だって、その様に造られているから。

わたしはわたしの頭脳が見通した行く末を伝える機能しかない。

告げる内容に私情を挟むことは許されていない。そのような能力ちからもない。


ただ、壁に埋もれてお客様のコインを飲み込み、口から彼ないし彼女の運命を吐き出すしかない。

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