第2話・膝枕(前)
「絶対領域は死語だなんて絶対言わせない……これこそまさに聖域……」
幼馴染が恋人になってから一日経って、今日も今日とて放課後は
変わったのは関係性だけでなく、私の姿も強制変更されていた。
「あの~真綿さん?」
「なに?」
「なに? は、こっちのセリフなんだけど……」
上半身は制服だけど、下はスカートから短パンへ。そして靴下も普通のハイソからいつもは履かない真っ黒なニーソへ。
「どう考えても膝枕でしょ? 何を疑問に持つことがあるの?」
「膝枕は別にいいんだけどなんで着替えされたの?」
「そりゃあ最高級の素材を最高のカタチで堪能するためでしょうが!」
金八先生みたいな叱責をした真綿だけど、膝の上だし決まりが悪い。
「灯里の太もも……すべすべなのにもちもちで……この世全ての
絶対領域――と呼ばれている短パンとニーソの間にある肉の部分――を、手のひらで撫でたり頬を寄せたりフレンチキスをしたり忙しそうな真綿。
短パンはわかるけど、そんなに触りたいならニーソじゃなくて良くない? って言ってもたぶん変な理論で論破されそうだしやめとこ。
「そういえば……さわり心地が良いっていうのはクラスの子にも言われたな」
「はぁあああぁあああああ!?」
ほのぼのとまったりとろけていた空間に突然響く真綿の絶叫。
「えっ、なに、どうした?」
「私の灯里が他人にベタベタ触られてるシーンを想像しちゃった……ひぃぃぃいいいいい脳が破壊されるぅぅうぅううううう!」
「うるっさ」
膝枕を中断したと思ったらこんどは頭を抱え、たっぷりの涙を浮かべながら非難してきた。
「なんでぇ? なんで触らせちゃうの? いくらもらったの!?」
「こんなんで金とるかよ……」
「こん……なん……? この太ももはお金どころか天下取れるよ? 生計立てられるよ……?」
こんなんで天下取れたら三国志は存在しないし、生計立てられたら貧困は存在しない。
「はぁ。別によくない? 今真綿にも触らせてるんだし」
「私は恋人なんだから触るのは当然でしょ! というか付き合うまで触ったことなかったし!! なんでクラスの子に……バカなの? 慈悲なの? 女神なの??」
「なんか……着替えてる時そういうノリになったんだよ」
「…………この美しい雪原を私より先に踏みしめた人間……許すまじ……。灯里の太ももを堪能した感想を原稿用紙千枚分に綴ってもらうしか……!」
「横暴にも程がある」
「こうなったら……私も……まだ……誰にも触られたことのない場所を触るしかないわね……! そうよねッ!!」
キッと眼光を鋭くした真綿は、これまで太ももで遊ばせていた手を足の付根へと伸ばしてきた。
「えっ、いやいやちょっと、それはヤダ」
が、流石に制止する。
「ヤじゃない! 我がまま言わないの!」
「私が駄々こねてるみたいな言い方やめてよ」
「なんでダメなのぉ? 私みたいなのに触られるのは嫌ってことなの!?」
「真綿がどうとか言うより、普通に汚いし」
「灯里に汚いとこなんてあるわけないでしょ!! どこよ! 言ってみなさいよ! 今すぐ触ってあげるから!!」
「話が通じない……」
別に痒くはないけど頭をかいて宙を見る。未だ続く真綿の非難が遠のいて、違う景色がフェードインしてきた。
『また赤点? ……今日から毎日一緒に勉強するわよ。勘違いしないでよね、私が一緒の高校行きたいだけなんだから!』
『今日も菓子パン食べてるの? もーしょうがないわね、はい、私のおかずあげる』
『……明日からお弁当、作ってきてあげようか?』
『灯里、困ったことがあったらなんでも言ってね。必ず力になるわ』
……付き合う前の真綿が走馬灯みたいに脳裏を流れる。
私はこっちの優しくて何でもソツがない真綿がホンモノだと思ってたけど、今こうして全力で私に接してくれる真綿だって、ホンモノなんだよな。
きっと今までも、いろんなことを我慢してきてくれて……それでも傍にいてくれたんだ。
「真綿」
「……なに? ッ!!!!!!!」
「……一応ここは、誰にも触られたこと、ないよ?」
ブレザーを脱いでシャツのボタンを外し、上半身のほとんどを露出させる。はぁ、何してんだ私。
「あ、ああ、灯里ちゃん何を……」
真綿は両手で目を覆うも、指の隙間からバッチリこちらを覗いている。
「ほら、これでもう機嫌直してよ」
目隠しとして機能していない真綿の右手を掴んで、胸の方に引き寄せた。ブラ越しとはいえちょっと恥ずかしい。引かれたらやだな。
「なっ、あのね、そういう問題じゃないの。大体私が胸程度で懐柔されると思ったら大間違いあ、ああああうわああぁあああ灯里ちゃんのおっぱ……おむ、お胸様……ふわっふわだぁぁあああああああ! おもっ! 何この重量級兵器! というかお手々におしゃまりきりましぇえぇぇえええん!」
しばらくつべこべ言ってた真綿だけど、一揉み二揉みしていくうちに静かになっていった。
「……ありがとう……本当にありがとう……神様仏様灯里様……」
しとしと泣きながらおっぱい揉んでる
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