精神論では星も心も輝かない

「ヒチコックの映画論、三幕構成、トミースナイダー脚本術…なにこれ?」

姉の部屋がうんともすんとも言わなくなったので合鍵でこじ開けたてみた。枕にして爆睡していたのが、この三冊。うんっと背伸びして本人が覚醒した。

「全部、読んだ」

平然と言ってのける所が地味に凄い。

「読んだ…って?」

代美がフリーズしているとツヅリは嬉しそうに活字銀座のマイページを開いた。彼女の最新作が立派な表紙付きで鎮座している。

「星、星が降らないの。いや、降るほどでもないけどさ、一個くらい飛んできてもいいんじゃない?」

ツヅリは0が並ぶリストの前で突っ伏した。

「でも姉ぇって勉強したんだよね?」

こくこく。

潤んだ瞳に代美の真顔が揺れる。

「読んでいい?」

怖いもの見たさで第一話をクリックする。


そして、小一時間が過ぎた。

「結論から申し上げますと見違えるほど上手になってます。文章表現、は」

ツヅリは神妙に聞き入ってる。

「でも、冒頭から王子の死体を築いてどうするんですか!お姉様!!」

ガーンとピアノが連弾される。

「イケると…思ったのに…」

ぽてっとツヅリのむくろが空しく転がった。

「うん。姉ぇの根性は凄いよ。でも活字銀座の星は血と汗じゃつかめないの」

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