星を求めて

作家デビューと言ってもいきなり持ち込むとか自費出版するわけでもない。だいたい、今どきの編集部は一般人の原稿を受け付けていない。機密漏洩防止や個人情報保護法の関係で部外者を事務所の深奥まで立ち入らせないし、新型ウイルスが蔓延してますます遠い場所になった。狭き門がピシャリと閉じた。

代替え策としてオンライン公募やスカウト、編集者によるピックアップがある。有望株を発掘する「スコッパー」という有志までいる。

そのあたり、もともと承認欲求が過剰なツヅリは抜け目なく調べつくしていた。

「活字銀座というサイトがあるの」

すっかり出来上がったダメ作家が五月雨式にキーを叩いている。

浮き沈みが激しいキーボードは生産性が落ちるだろう、姉。


活字銀座はこれまた団栗の背比べ的な投稿サイトで、集まる作品も「元勇者が王様の料理人やっています」だの「悪役令嬢転生したわたしがパート主婦の大奥様とアレな関係♀♀?」とか、乾いた雑巾をねじ切るような勝負を仕掛けている。

そんな修羅場へ純粋無垢の姉が飛び込んでいくのだ。代美は少しというより。かなり心配している。真っ白に燃え尽きてしまわなければいいが。

「でーきーた! 投稿するね」

あれよあれよいう間にと処女作を書き上げ、意気揚々とボタンを押した。


……ブラウザをリロードし続けること4時間経過。

星はまだ降らない。

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