第二十三話 烏の寝どころへ行くとて
もうすぐ文化祭です。ちょっとワクワクしてます。高校に入って初めての文化祭、私のクラスはタピオカ屋さんをするみたいです。
最初、タピオカ屋さんは男子達にあまりウケなかったのですが、売り上げがクラスに還元されるという話が出た瞬間にすごく乗り気になってました。全く、男子は現金です。
タピオカなんてブームがすぎたような気はするのですが、そこはクラスのリーダー的な子が『映えるやつ作ってやるぞー!』みたいな感じで張り切っていたので、なんとかなりそうな気はします。
「ね〜、こはる〜。頼まれてた買い出しなんだけど、今度の土日どっちか行こ〜」
「今度の土日…、ん!了解!」
売り上げが還元される、ということは。当たり前ですが、材料費とかはもちろん自分たち持ちです。
買い出し担当は私と、隣を歩く西島ふうか。それと、もうひとり。
「あーしもいくゾ」
不思議なオーラの的場みきちゃんです。身長はふうかより少し低いくらいなので、女子にしてはちょっと高めです。お洒落な縁無しの丸メガネを掛けてるのですが、多分度なしです。髪は茶髪で腰くらいまであって、ウェーブが掛かっています。美人さんです。
あまり話す機会がなかったのですが、丁度今回の買い出し担当をキッカケに少し仲良くなれそうです。
「そーいえば、遂に来るみたいだネ。今度の土日コメリの駐車場に今人気のパンケーキ屋さんの出店」
「え!あのcafe ベツバラーレのやつ!?」
「そそ、ついでにそこも寄ってみよーヨ」
cafeベツバラーレ、最近人気が出てきたパンケーキ屋さんで、普段は店舗を構えてるのですが、最近はキッチンカーで県内周辺を回ってるらしいです。私も前食べたことがあるのですが、すっごく美味しかったので印象に残ってます。
コメリっていうのは学校の近所にあるホームセンターの名前で、買い出しに行こうと思ってるスーパーの近くにあるので、その話題のパンケーキの出店に行くなら丁度いいんです。
「やった〜!ちょ〜嬉しい!」
「こはもさ、パンケーキ行こうネ」
「うん!もちろん!」
「じゃ、打ち合わせはまたSNSにて!」
そしてみきちゃんはすーっと廊下を進んであっという間に突き当たりの角を曲がって見えなくなりました。神出鬼没、不思議な子です。
さて、文化祭。私のクラスが決まったということは、ぱいせんのクラスも決まっているということです。決まってるか断言は出来ませんが、多分決まってます。
そうと決まれば、あとはぱいせんを探しに行くだけ。ふうかとも別れて、ぱいせんが行きそうな廊下をしらみ潰しに歩いて行きます。
すると、目の前から男子生徒が歩いてきました。その人はなんか変なオーラを放っていて、興味本位でチラッと見たら、向こうもこっちに気付いてしまいました。
「…ん?キミ、どうかした?」
「い、いえ。すみません」
「そっか…、ならあまり人のことを凝視しないほうがいいよ。ま、ボクがカッコいいのが悪いのか」
「…???」
声をかけられてしまいました。変な目で見てしまった、と思って謝ったのですが。
なんだろう。この人、何を言っているのかわかりません。
頭にはてなマークを浮かべていた私にその人は軽く手を上げると歩いて行きました。
変な人…。
そんなことより、ぱいせんです。
去年は高熱を出したとか言ってましたが、ぱいせんの性格を鑑みるに絶対仮病です。今年もあんま乗り気じゃなさそうだったので、私が『遊びに行きます』と言っておきました。あの人は優しい人なので、多分これで休むことはないはずです。
ちょっと強引な気もしますけど、これで良いと思います。
それにしても出し物は何にするんでしょうか。去年は喫茶店とか言ってたので、今年も似たような路線なら遊びに行きやすいので嬉しいです。
ホラー系とかはないと思いたいです。怖いのは得意じゃないので…ってか嫌いです、普通に怖いです。昔ちっちゃい頃にお母さんと見たホラー映画がトラウマで、そこからはホラー耐性なんて無くなりました。
ちなみに文化祭でどんな出し物が人気あるんだろうと思い、高校、文化祭、とかで検索掛けてみると、お化け屋敷とかやってるクラスが結構出てきたので、ぱいせんのクラスがやる出し物がお化け屋敷じゃないとは言い切れません。賭けです。
っと。いました。ぱいせんです。
「ぱいせん」
「お、おん?あ、八重桜さん、こんにちは」
私が呼びかけるとぱいせんは脱いだ上履きを靴箱に直して挨拶をしてくれました。
「こんにちは。文化祭の話なのですが、私のクラスはタピオカ屋さんに決まりましたので、当日飲みにきてください。」
「た、タピオカかぁ、飲んだことないな。良い機会だし、飲みに行くね」
取り敢えずぱいせんに来て欲しいのでお誘いを掛けました。飲みに行く、と言ってくれたので多分今年の文化祭は来てはくれそうです。
さて、それはそれで良いとして。文化祭を頑張って乗り切るぱいせんの姿を見にいくのが楽しみなので、この流れでなんの出し物をするのか聞いてみます。
「はい、お待ちしてます。それで、ぱいせんのクラスは今年の出し物決まりましたか?」
ホラー系じゃないことを祈りながら、ぱいせんに聞こえないくらいの音で唾をゴクリ。
「おん、俺のクラスは━━━━━━」
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