第十六話 花火大会 前日
あれから数日経った。
結局誰からも連絡は来ず、花火大会の前日の朝。
期待はしてたけど、同時に期待はしてなかったので気持ち半分のまま布団に転がっています。
「今年も家から見ようかな」
一応籠城できるようにトースターで焼く用のピザとかコーラとかポテチとかは買ってるので、このまま家から出なくても何の問題もない。
数日分の冷凍食品も完備。お好み焼きにペペロンチーノ、唐揚げに、あると便利な業務スーパーのナスとブロッコリーとほうれん草、それとレンコンにおいしいワッフル。
業務スーパーのワッフル10個入ってるやつ、ほんとに美味しいんだよね。
ついでに米も3合ほど炊いてるので、無問題。
さて、全く来ない通知。もうピロン、なんてならない。何故ならあのゲームアプリを消したからな、はは。
「はぁ」
いや、特に期待してないといえば嘘になるけど、そんなに期待してたわけじゃない。
そりゃ、今まで夏休みに女子と遊んだことなんてなかったし、直接話しかけられるなんてこともなかったから期待はするよ。
でもさ、結局八重桜こはると2人で遊んだ時も、あんま話すことなかったし、上手く話題とか触れなかったから向こうに気を使わせてしまったから、次は無いなーって思ってたし、ピオで篠崎まおの友達と会って声かけられたときも変な敬語で返してしまって変に思われてるだろうし。
気持ち的には連絡があったら嬉しいな、ってそりゃ思うけど理性で考えると無くて当たり前なんだよなぁ。
でもさ、俺思ったんだけど、どうせ嫌われるんなら少しくらいはこっちから動いてもいいんじゃねぇかなって。
俺の中の感情が「お前から連絡すんだよ!嫌われたらそん時はそん時だし、お前元からじゃん」と「なんて連絡するの?キモがられるだけだし、気持ちが辛いだけだからやめとこ」で戦ってる。
「かぁー、二律背反ってやつよねぇ」
そうなのだ。確かにもう連絡しようぜ、っていう気持ちは強いんだけど、いざメッセージ打とうとすると、なんて打てばいいんだろうどんな文が正解なのかな、なんて不安になって結局後回しになるのだ。
「どうしろってんだよ、もう」
踏ん切りが付かない自分がもどかしい。そんな絶賛葛藤中の俺の携帯に通知が来た。
『明日暇でしょ?私と花火大会行かない?』
通知の正体は篠崎まおからのメッセージ。しかも内容が花火大会のお誘い。
なにこれ、まじ??こんな前日に急にお誘いが来ることある??え、幸せ?
確かに暇だし、この誘い断るわけには行かないだろう。ってか浴衣姿(多分)の篠崎まおと歩けるの!?それだけで悔いはないよ!?
「え、行きます」
速攻で返事を打とうとして、頭に八重桜こはるの顔がふと浮かんだ。
どうしてこんな時に思い出すのだろう。篠崎まおは入学当時からの一目惚れの相手だし、学年一の美人さんだし、なんも躊躇うことはない。
寧ろ速攻で飛び付かない方がおかしい。だけど速攻で飛び付けなかった俺はおかしくなってるのだろうか。
でもあれから、八重桜こはるからはなんの連絡も無い。もし好いてくれてるのなら、連絡があってもおかしくないはず、と思う。
「篠崎まおの浴衣姿…へへへ」
俺は一瞬の逡巡の後、行くという返信をした。だって行くしかないじゃん。
マジかー、念願の夢が叶うのか…。2人で遊びに行こうぜ、なんて高校生活の初っ端に言ったセリフが叶うとは。
ちなみに他の人間は後々合流するみたいなので、最初の30分くらいだけ2人で見て回る感じである。
その後も来ればいいのに、というメッセージを頂いたのだが、流石に他の人も来るのは俺のキャパが崩壊する。
「ワックスとか買いに行くかぁ」
他所行きのシャツとズボンを用意して、たまにはオシャレしようじゃないか。
流石に浴衣は無かったので、洋服くらいは見繕っていこう。
「明日楽しみやなぁ…」
でも緊張するな…。何話そう。なんかネタとかあらかじめ考えていこう。せっかく貴重な時間を俺なんかに使ってくれるわけだから、退屈はさせられないし、どうせなら楽しんでもらいたいよなぁ。
しっかし、そんなこと俺に出来んやろうけど。まぁ、なんとかやってみようじゃないか、おん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます