第八話 月のころはさらなり

みーんみーんみーー。


遂に夏休みがやってきた。

今年の夏は何故が女子2人の連絡先を手に入れることができたのでなんか起こりそうな気がする。


いつも掛けてる朝の煩わしい目覚まし時計は夏休みの間はお休み。

ゆっくり10時ごろ起床した俺は取り敢えず携帯を見てみたが、なにも連絡はない。


ハートが回復したよ!というゲームからのメッセージだけ。

正直、連絡先交換してすぐ連絡なんて来るわけねぇわな。


「とかいって来るんだろうな」


しかし12時近くまでなっても携帯は一向にならない。ゲームの通知すら来なくなった。これは本当にこないパターンなのかもしれない。期待するだけ悲しくなるだけだぞ俺。


「下降りて飯でも作って食べよ」


そろそろ腹も減ってきたので仕方なく自室を出て一回のリビングに向かう。


俺の親は出張が多く、殆ど一人暮らしみたいな生活をしている。そのため少しくらいなら料理が作れるのだ。まぁ、3分料理かスクランブルエッグくらいだか。


「出来た、卵乗せカップ麺」


文字通り卵を乗せただけのカップラーメンを舌鼓を打ちながら啜る。


天気は良いので外に出るには絶好の日だ。

今日はあまりゲームに没頭する気にはならないので俺は外に出ることにした。


田舎なので空気だけは良いのだ。

この前オープンした結構大きめの道の駅にでも行ってみようか。

夢太郎団子から少し距離がある所にあって、有名なキャンプ用品店が敷地に入ってたり、デカい駐車場には電気自動車の充電スペースもあるみたい。


でも人多そうだしいつものとこでいいか。


いつものとこ、とはいつも学校終わりに大判焼きを買って帰るショッピングモールのことだ。ちなみに名前はピオ。


ってもここ、なにもないんだよな…。あるのは大判焼きと冬の時期だけある「芋きんつば」。あとは100均やらスーパーやらレディースの服屋、申し訳程度のゲームセンターくらい。


「…あれは?」


ショッピングモールの中にあるスーパーを散策してると、生活用品売り場のところに背の高い美人さんを発見した。


こんなとこにいる高身長の美人って言ったら一人しかいない。


「生徒会長…!」


萩原紗里…だっけ、由莉だっけ。もういいや生徒会長だけで。


その生徒会長がトイレットペーパーの品定めをしていた。その行動だけ見れば虎柄の服を着たおばちゃんと同じだ。


「…?今なんか声がしたような」


ボソッと呟いただけなのに生徒会長の聴覚に引っかかってしまった。急いで口を両手で塞いで物陰に隠れる。ってかあの人どんな聴覚してるんだろうか。


「まぁ、いいか。こっちのサラリンの方がコスパが良さそうだし」


生徒会長はトイレットペーパーを買い物カゴの中に入れ、惣菜コーナーの方へ歩いて行った。


なんか意外な一面を見ることが出来た。生徒会長は家庭的で倹約家…、ふむ。


流石狭い田舎だ、やっぱりみんなピオに来るんだろうか。生活用品とか食材とかは近所のドラッグストアでも買えるんだろうけどね。


今日も大判焼きでも買って帰ろう。

あとはママチャリのチェーンに塗布する錆び取りでも100均で買うか。


最近の100均は侮れない。まじで、100均かこれ、って思うくらいの便利商品ばっかりだし。よくお世話になる。


たまに100円やろ、と思って買ったら300円商品だったときとかは少し損した気分にはなるけど。


そして俺はピオの中にある100均に入り、錆び取りを探していると工具コーナーになんか見覚えのある人がいた。


「ふふーんふふふん」


鼻歌を歌ってるその人は、篠崎まおといつも一緒にいる篠崎まおと一緒の部活の人だ。多分だけど。名前はなんだっけ。あんま興味ないからスルーしていたので名前が少しも出てこない。


というかさっきの生徒会長もそうだが、私服になるといつもの3倍増しくらいで、可愛く見えたり綺麗に見えたりするのは中々面白い。


普段何も思わない人でも可愛く見えるっていうことは私服マジックって本当にあるんだろうね。メイクもあると思うし。


どうして篠崎まおの友達だと判別できたかというと、まぁ篠崎まおを見てたら視界に入って来るし顔は覚えれるって感じだ。覚えるっていうか記憶の片隅に微かに残ってる感じ。


生徒会長はあの美貌と高身長なのでなにしてようが1発で分かる自信がある。


「観葉植物を飾る棚を作るのに100均の工具って使えるんだよね〜100均まじ助かるな〜」


篠崎まおの友達は独り言を説明口調で話し、嬉々としながら工具を買い物かごに放り込み、レジへと歩いて行った。


本当に意外だな。あんな趣味があの人にあるとは。意外なのかは分からんけど。


さて、錆び取りも買ったことだし、大判焼きも今日は3つほど買ったのでそろそろ撤収しよう。


なんか意外な人の意外な一面も見ることが出来たし、たまには外に出るのも悪くないな。


そして俺は自転車を止めてる駐輪場へ歩き出した。

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