第四話 すこしあかりて

取り敢えず今日も何もなかった。あれから数日、何もない毎日が続いている。

今日は一回も授業で当てられる事がなかったのでいい傾向だ。


「きりーつ、礼」

「「「ありがとうございましたー」」」


帰りのホームルームが終わり、クラスメイトたちは仲良い奴らや部活仲間で集まり雑談しながらクラスを出ていく。


俺は窓際に席があるため、出口からは一番遠い。


なんか窓際がいいなと思って席替えの時に座ったら、誰も何も言わず席が決まった。多分窓際がいいやつもいたんだろうけど、それより俺に話しかける方が嫌だったのだろう。我ながら清々しい嫌われっぷりだ。


「そこ、教室鍵閉めるから早く出なさい」

「分かりました」


先生の催促で俺は教室を後にする。


取り敢えず今日も少し放課後の散歩と行こう。

にしても昨日の告白劇は結構面白かった。


あれ以来赤坂の篠崎まおへの態度が少し硬くなったのが俺の中ではかなりネタになっている。


さて今日こそは帰りに大判焼きを買って帰ろう。昨日は買うの忘れてそのまま帰っちゃったし。


さて帰るにしても今日はいつも降りる階段とは逆方向から行こう。


そのルートから行くと、下に降りる階段までに一つ死角の多い角を曲がらなければならないのだがまぁ、下校時間過ぎてるし人いないっしょ。


そして俺が角を曲がると何かにぶつかった。


「んっ」

「!?」


なんだこれ、柔らかい…??


柔らかい質感の何かは俺を睥睨すると、糾弾した。


「こ、こないなところでなにしてはりますの!」

「は、はりますの!?」


よく見ると、柔らかい正体は人だった。まぁ、喋ってるし人なんだろうけど、にしても。

高身長のこの人、どこかで見たような気がするが。こんなめっちゃ美人さん忘れるはずはないと思うけど。


あ、この人。この前の式典で挨拶してた人だ。


「生徒会長の!」

「突然何を言ってるんですか」


そう、生徒会長でかなり真面目な印象を持つ高身長女子、萩原由莉先輩。たしかそんな名前だったと思う。いや茉莉だっけな?


生徒会長の身長は少なくとも175cm以上はあり、クラスの男が「あの高身長から見下されるの良いな」などと漏らしていたのを聞いた事がある。


「すみませんぼけっとしてました」

「気を付けて歩きなさい、では」


そう言って去っていく生徒会長。なんだか悪いのが全部俺みたいになっているのは解さないが、たしかにあの人は凄い美人だな。


というかあの柔らかい感触はいったい何だったのだろうか。それと。


「はりますの…?」


そう、はりますの。しかもこないなところで。

生徒会長にはそんな属性があるのだろうか。

そんなにあの人に興味ないから知らんけども。


「大判焼き買って帰るか」


にしても今日もあの一年生とすれ違わなかったな…。まぁ、色々と忙しいんだろう。いつも遭遇してたら流石に向こうも嫌だろうし。


そして俺は一応近くに一年生がいるかを確認し、いなかったので駐輪場へと向かった。


いや別にいたところでどうすることもないんだけどさ。

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