第二話 やうやう白く
「いっちにーさんし!」
「ごーろくしちはち!」
外では運動部が準備体操をしている。
今日は天気が良いから気持ち良いんだろうな。
帰宅部の俺は今日もまた廊下を歩きながら時間を潰していた。
頭に浮かぶのは昨日、駐輪場で話しかけて来た生徒会の一年生。あの子はかなり可愛かった。人気あるんだろうな。篠崎まおとはまた違った可愛さがある。良い意味であざとくないし。
まぁでも篠崎まおのあざと可愛いってもの強いと思う。今でも俺はまだ篠崎に少し好意を抱いているのだ。
「あ」
体育館近くに差し掛かると窓から部活に励む篠崎まおの姿が見えた。汗をかきながらバレーボールを打ち返すその姿は女神と呼んでも差し支えはないと思う。かわいい。
なんとこの篠崎まお、クラスカースト最上位に君臨しておきながら、彼氏は作ってないらしい。
それもクラス一のイケメンに告白されたが、見向きもせずに振ったのだとか。さすがクラス一可愛いやつ。
「部活熱心ってやつなのかねぇ」
少なくとも俺には篠崎まおの考えていることなど分からないが、まぁそれは置いといて。
「そろぼち帰るか」
ずーーーっと窓から篠崎まおを覗いていた俺は後ろに人が立っていることに全く気が付かなかった。
「ぱいせん」
「!?」
思わず尻餅をつき一回転。
どうにか体育館の壁を蹴らずに済んだわけだが、仰向けになってしまった。
なんか聞き覚えのある声。俺が上を見ると、あの一年生が立っていた。
「こんな所で何をしてるんですか?」
「ふぇ、あ、あの、その、エッ、アッ」
「取り敢えず生活指導の先生に覗きがいましたと報告しておきます」
「ちょ、ちがっ」
「なにが違うんですか?」
微笑みながら手に持っていたバインダーに何かを書き込んでいく一年生。
これは人生終わったかもしれない。
というか学校生活は確実に終わる。
「お、俺はバレーに興味があって」
「で、わざわざ女バレを見てたんですか?」
「…そうだよ!女バレってなんかいいだろ!」
「何がいいのか分かりませんが私はこれで」
「ちょ、おい、アッ」
立ち去っていく一年生。ちょっと大声を出したのが聞こえたのか寄ってくる女バレ部員。
ここで篠崎に見つかったら終わる…!
絶体絶命の俺は、体育館入口に置いてあったとび箱の中に飛び込み、蓋を閉めた。
「なんか今言い合いみたいな声聞こえたよね?」
「誰もいないじゃん、練習戻ろ?」
「はーい」
ふぅ…。どうにかバレずに済んだみたいだ。
大人しく今日は帰ろう。
帰路に着こうとすると廊下端のトイレの前にさっきの一年生が持っていたバインダーを発見した。これは隠滅するチャンスなのでは…?
周りを見回し、あの一年生がいないかを確認してバインダーを開いた俺は、そのバインダーには生徒会のマニュアルしか挟まれておらず、そのマニュアルに色々と書き込まれていることだけしか見つけることが出来なかった。
「ふぅ」
マニュアルを書き込んでたのか。
安心した俺はバインダーを元に戻すと、駐輪場へと歩きだした。
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