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彼女が、作品を勧めてきた。
作者の名前は、DOR4-8。誰だか分からない。名前も知らない漫画家。いや、もしかしたら画家かも。わからん。違いがわからん。絵と漫画の。
「ううん。微妙」
評価は微妙。
「なんかさ、展開に詰まると突然えっちな展開になるよね。この手のやつ」
えっちな展開なら、えっちな展開らしく、派手にえっちに振り切ればいいのに。この作者。さてはえっちな展開を知らんな。
「これさ、だんだん服脱いでいくのが、なんか、そういう、なんというか、えっち方向に逃げるような感じがして、なんかいや」
あっやべっ。
彼女の顔がせつなくなった。まずい。ほめないといけなかったか。選択肢を失敗した。やばいやばい。
「あ、いや、作品自体を否定したんじゃなくてさ」
あっやめてそんな顔しないで。もういいですなぐさめなくていいですみたいな顔しないでよ。
「あのさ」
ええと。どうしよ。
「何か、描きたかったことを、隠してる、かな。この作者」
おっ、わたしにしては良さげな緊急回避。
「だよね。たぶん、そうだよね」
よかった。彼女の顔が
「よかったあ」
彼女は、喋れないから。わたしはいつも、お花畑を歩いているような気分になる。綺麗な花を踏まないように。注意しながら歩く。
でも、彼女だから。わたしの。
いや、勝手にそう思ってるだけだけど。
だってほら。彼女ほら。彼女だから。わたしも彼女だから。彼女彼女。磁石だと反発しないといけないやつだから。
だから、なるべく、そっと。
彼女の顔がせつなくならないように。
声がなくても。
ちんちんがなくても。
大丈夫だよって。
伝え。
いや。
ちんちんは関係ないな。
忘れてください。
なによ。
なに見てんのよ。
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