D.O.R.4-8 (※lily注意)

春嵐

α

 わたしの好きなひとが、わたしの作品を見ている。

 作者がわたしだとは、教えていない。


「ううん。微妙」


 評価は微妙らしい。


「なんかさ、展開に詰まると突然えっちな展開になるよね。この手のやつ」


 それは漫画とかの話です。わたしの作品は絵です。絵が4枚。


「これさ、だんだん服脱いでいくのが、なんか、そういう、なんというか、えっち方向に逃げるような感じがして、なんかいや」


 なんかいや。

 いちばんストレートな否定。

 ちょっとだけ、せつない。


「あ、いや、作品自体を否定したんじゃなくてさ」


 恋人が、わたしの切ない気分をなんとなく察して、その場しのぎを始めた。もういいです。なぐさめなくていいです。


「あのさ」


 はい。なんですか。


「何か、描きたかったことを、隠してる、かな。この作者」


 あっ。


「だよね。たぶん、そうだよね」


 はい。

 その通りです。


「よかったあ」


 彼女が、安心する。その場しのぎに成功した。これで大丈夫。そう思っていることでしょう。待ち時間なしでぴったり電車に乗れたときみたいな、満足げな顔。

 そう。

 わたしが描きたかったのは、あなた。

 あなたの、その。

 あなたを描きたかった。

 でも。

 わたしは、その。

 下半身がマイナスなので。同じくマイナスのあなたとは。

 あっ。そっか。だからえっちな展開に逃げたのか。

 せつないなあ。

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