D.O.R.4-8 (※lily注意)
春嵐
α
わたしの好きなひとが、わたしの作品を見ている。
作者がわたしだとは、教えていない。
「ううん。微妙」
評価は微妙らしい。
「なんかさ、展開に詰まると突然えっちな展開になるよね。この手のやつ」
それは漫画とかの話です。わたしの作品は絵です。絵が4枚。
「これさ、だんだん服脱いでいくのが、なんか、そういう、なんというか、えっち方向に逃げるような感じがして、なんかいや」
なんかいや。
いちばんストレートな否定。
ちょっとだけ、
「あ、いや、作品自体を否定したんじゃなくてさ」
恋人が、わたしの切ない気分をなんとなく察して、その場しのぎを始めた。もういいです。なぐさめなくていいです。
「あのさ」
はい。なんですか。
「何か、描きたかったことを、隠してる、かな。この作者」
あっ。
「だよね。たぶん、そうだよね」
はい。
その通りです。
「よかったあ」
彼女が、安心する。その場しのぎに成功した。これで大丈夫。そう思っていることでしょう。待ち時間なしでぴったり電車に乗れたときみたいな、満足げな顔。
そう。
わたしが描きたかったのは、あなた。
あなたの、その。
あなたを描きたかった。
でも。
わたしは、その。
下半身がマイナスなので。同じくマイナスのあなたとは。
あっ。そっか。だからえっちな展開に逃げたのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます