それぞれの道

「ねぇ、ジャージ貸してよ」


彼の匂いが染み付いたジャージを借りた。

自分の部屋で着て、嗅いでみて頬がだらしなくゆるむ。

萌え袖をして写真を撮って送る。

可愛く写りたくて何度も撮り直した。


それから彼を近くに感じたい日は、ジャージを着てフゴフゴいってたくさん嗅いだ。

こんなちょぴっと変態的なことでもすごく心が満たされる。


お互い勉強が忙しくて会う時間が減ってきた。

ジャージを着る時間は増えたけど。


なんだったら寝間着にして一緒に寝てる。

自分で洗いすぎて彼の匂いは落ちちゃった。


世界を彩っていた紅葉が終わり、冬が訪れた。


ジャージはタンスの中に閉まい、ほとんど着ることはなくなっていた。


この冬は大事な時期だ。受験のラストスパート。

起きている時間はなるべく勉強にあてた。


受験の結果は見事に合格した。

必死に勉強したかいあって、国公立の大学に受かった。


今日から学生寮での一人暮らしが始まる。

学生寮近くに満開の桜が起立しており、新入生を歓迎しているようだ。


そういえば、彼はどこの大学に受かったのだろう。


ジャージ、どこにやったんだっけ。




テーマ【ジャージ】

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