だから彼女はラーメンを食べる


「お待たせしました、特選赤味噌豚骨ラーメン大盛りにんにく増しです」

「ありがとうございます」


可視化される大量の湯気。

目の前にあるだけで、圧倒される存在感。

鼻孔をくすぐる味噌と豚骨の濃い香り、にんにくのインパクトあるニオイ。


あぁ、最高だ。


初手は決まってスープから。

油の浮いた濃厚な味噌豚骨スープをレンゲで掬い、熱々のまま口に運ぶ。

一瞬背筋が伸び足の指をぎゅっとたたむほど驚く熱さだが、これがいい。

赤味噌のこれでもかと主張してくる濃ゆい味と、豚骨とにんにくのダブルパンチが口の中で踊る。


「うまっ」


思わず口に出た。


次はチャーシュー。

豚バラの厚切りチャーシューは箸で持つとぷるぷると揺れ、乱暴にむしゃぶりつきたくなる魔性のお嬢のようだ。


噛むとほろりとくずれ、油は唾液で溶け肉から旨味がとめどなく出てくる。

まさに絶品。

我慢できず勢いのまま麺を掬う。


熱々の麺に一度息を吹きかけ冷まそうとするが、辛抱できず喰らいつく。

ほどよく硬く、コシがあり、スープと絡む。

嚥下するたびに暴力的な旨さを口いっぱいに感じ、思わず目尻が下がりだらしない顔をしてしまう。


至福とはこのこと。


二十三時をまわりこの塩分量は身体に悪いかもしれない。

でもそんなの関係なく食べる。


私を振ったあいつも今頃、この世界のどこかでラーメンを食って一息ついてんのかもしれない。

いや、あいつなら鮨とかかな。

上品なことで。


「……すいません、半チャーハンもお願いします」

「あいよー」


今日、お風呂入らなくていいか。





テーマ【ラーメン】

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