その後18 闘技会①

郵便局の仕事終わって家に帰ったら、家の前で郵便局の配達のお兄さんに会った。


「イズルくん、おつかれさま。手紙が届いてるよ」


お兄さんから受け取った手紙。俺に手紙をくれるのは…。


「おつかれさまです。ありがとうございます」


送り主を見てみると、やっぱりルエンくん。今日は何が書いてるのかな。


家に入ってほっと一息。椅子に座って、封筒をゆっくり開ける。

この封筒の封してあるとこ、学校の紋章みたいなの入っててかっこいいんだよなあ。


『イズルくん、こんにちは。今日はいいお知らせがあります!

学校で開催される、年に一回の闘技会の予選突破したんだ。

決勝トーナメントは来月の頭にあるので、よかったら見に来てください!』


ほー。よく分からないけど、闘技会というものがあるのだけは分かった。おっちゃんが帰ってきたら、聞いてみよう。行ってみたいな。見てみたいな。


続きも読んでみる。


『この大会は騎士団の人も見に来るかもしれないんだ。

そこで騎士団の人の目に留まれば、スカウトされることもあるって。だから頑張るよ。スカウトされれば入団確実だからね。将来のことも少し安心できる。イズルくんとの将来のこと!』


…最後のとこらへんは、おっちゃんには黙っとこう。ルエンくん、おっちゃんにしばかれると思う。


それにしても、俺は悪女だなあ。アンニュイな気分で窓の外を見て溜め息。

雰囲気は悪女。悪女ごっこ。


そんな悪女ごっこはそこそこに。

なんだかんだしてたら夕方になって、おっちゃんが帰って来た。


「おっちゃん、ルエンくんからの手紙に闘技会があるって書いてたよ」


ウキウキな気持ちでおっちゃんを見上げるが、おっちゃんはあんまり乗り気ではないみたいだ。


「ああ、ルエンは予選を突破したんだったな。…見に行きたいのか?」


渋々といった感じで俺の意見を聞いてくれるおっちゃんだけど、俺はあんまり気にしない。素直に返事する。


「うん。見てみたいな」


おっちゃんは溜め息吐いて、俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。


「その日はおっちゃんは運営の仕事があるから、坊主の案内ができないんだ。朝も早く行かなきゃならんし…」


「ひとりで大丈夫だよ。ひとりで行けるし、ひとりで見学できるし。…でも、帰りは一緒に帰れる?」


ひとりでも大丈夫だけど、帰るときは一緒がいいな。おっちゃん忙しいかな。


「ちょっと待っててもらえれば一緒に帰れると思うが…それまでひとりで大丈夫か?」


「大丈夫だよ!」


元気のいい返事に、おっちゃんは苦笑いして俺の頭をぽしぽしした。



晩ご飯のあと。

おっちゃんがシャワーを浴びてる隙にルエンくんへの返事を書く。


『ルエンくん、こんにちは。お手紙読みました。闘技会、見に行きます。今から応援してるね。頑張ってね。』


将来のことには触れない。そんなところもちょっぴり悪女。


また悪女ごっこのつもりで両肘ついて手に顔をのせて、「ふう」って溜め息。

そしたらそれをお風呂から出てきたおっちゃんに見られた。


「どうした?しんどいのか?」


悪女ごっこしてたとは言えないので、「ちょっと眠いだけ」って嘘吐いた。バカな遊びはもう止めとこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る