第2話 八重洲口  13:30

だから私はあなたがいなくても、私の心均衡を乱すことはない。たとえ二時にあなたが八重洲口の高速バスの停留所に来なくても。

私はどこかでまた思い出を作ろうとしているのか。

でも決定的に違う事がある。

あなたすでに人妻になっている。ということだ。

女をただかつて愛していたというだけの理由で、お茶に誘うは是なのか。嫌モラルという観点からいえば非であろう。なのに会おうというメールを打ってしまったのは、私のエゴなのだろうか。

後悔ではない。でも不思議な不安感がある。通常不安というのはその原因がありこうなったらどうしょうということで不安を感じる。いずれにしろ何らかの事が起こる確率は低い。七時から送別会だ。

現在が一時半。彼女を乗せだ高速バスは二時にこの八重洲口に到着する。

五時間。それが私たちに与えられた時間だ。


名古屋にいたときの営業部長は現在開発部の部長をしている。定年だということは知っていたが、その名古屋の時のメンバーが東京で送別会を開くということは知らなかった。それをメールで教えてくれたのもあなただ。ある意味偶然の産物だ。私はついこの間まで大阪にいた。その時点で彼あなたとの接点は皆無だった。それが三ヶ月前に東京に転勤になり、偶然あなたとメール交換をすることになった。

あなたはかつてうちの社員だった。それが結婚して会社を辞めて。今はパートで働いている。全国に小さいながらも事業所が広がるうちとしてはその地方のパートになってしまっては。接触する機会は皆無だ、それがなんかの拍子に私のところに在庫確認の電話をよこした。あなたも私もぜんぜん知らずに電話をしていた。

うん、この声は聞き覚えがと思って私は名をなのった。昔の話で少し盛り上が、あなたののメールアドレスを聞いて電話を切った。

それから私とあなたとのメール交換が始まった。

今から二ヶ月ほど前の話だ。

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