現実を自由に改変してしまえる能力を持ったがために、この世のすべてがつまらなく思えてしまう男子高校生の、日々の葛藤と運命の出会いのお話。
ジャンルとしては異能ものの現代ファンタジー、でも個人的にはド直球の青春小説です。
思春期年代に特有の心の有り様、例えば窮屈で退屈な世界への反発心であったり、あるいは根拠のない謎の万能感であったり。そういったものを、ほぼそのままひとつの物語として具現化したかのような、とても気持ちの良い作品。異能を使ってあれこれする話、というよりは、主人公の持つ異能そのものが主題であるかのような、この物語のあり方が本当に最高でした。
実際、強力すぎてどうしても絵空事感の出てしまう能力だと思うのですけれど、でもその絵空事感をまず前提においた上で、きっちりリアルな(言うなれば自らの力として駆使しているという実感のある)描き方をしてみせる、その描写のうまさに脱帽しました。さらりと自然にわからされる感じ。
最後の最後、お話の終わり方が好きです。この世界、この異能、この主人公だからこその帰着点。心の中に湧き上がってくる、ずっと忘れていた「あの頃」の感覚。最高でした。静かに胸を震わせてくれる快作です。