聞き込み
「話を聞いて予想はしていたが、お前らのクラスの連中はどうなってるんだ」
「なんか、すいません」
聞き込みを粗方終えた撫子が廊下を歩きながらぼやく。それに対して春樹は謝るしかできなかった。というのも
「なんなんだ、自分の物が無くなっているのにどうでもいいだの気づかなかっただ
の」
そう、物を無くしたであろう春樹のクラスメイトは自分の物に関心がないのか一様に他人事で生返事しか返って来なかった。
「まあ、無くなってもそれほど困らないものばかりだし、俺らも最初そんな感じだったんで分からないでもないんですけどね」
一応クラスメイトなので、フォローを入れる春樹だったが
「なら一番悔しがってたのが、練り消しを無くした奴ってどうなんだ」
「それに関しては…何も言えないです」
「あははは…」
流石の乙葉も苦笑いするしかないようだ。
「あ、あと校舎に残ってるのは美術部の近藤くらいか?」
他の三人と同じく苦笑しかできなかった友雪がやっと口を開く。
「たぶんそうだな、なら美術室か」
「最後はまともなやつだといいんだが」
■■■
美術室の前まで来た一行は、開けられたままのドアから目的の人物を探す。
「ええっと、ああいたいた。お~い近藤! ちょっといいか~?」
いち早く見つけた友雪が呼ぶと、一人の男子生徒が反応する。
「え? あ、ああ。…なに? なんか用?」
近くに来た男子生徒、近くで見ると少し気は弱そうだが真面目そうな好青年である。
「ちょっと聞きたいことがあってな。今日、持ち物で無くなったものとかない?」
そのまま呼んだ本人が用件を掻い摘んで説明する。
「え、なんで知ってるの? ちょうど今気づいたんだけど、授業で描いた絵が失くなってるんだ」
「授業って、あの似顔絵?」
反応したのは、春樹。余程嫌だったのか眉間に皺が寄っている。
「そう、鞄の中とかも探してみたんだけど無くて…ねぇ、何か探してるんだったらついでに僕のも探してくれない?」
「任せろ、それも依頼の内だからな見つけてやる」
近藤のお願いに、腰に手を当て自信ありげに胸を張る撫子。傍から見ると、前ならへの先頭の生徒に見えなくもない。
「えっと?」
用紙に似つかわしくない態度に呆気にとられる近藤。
「ああ、こちら三年で探偵部の長月先輩」
近藤の状況に既視感を抱きながら、春樹が紹介する。
「探偵部?」
「お前も何かあったら来い。聞くだけなら聞いてやる」
「は、はぁ・・」
「じゃあ後は任せて部活頑張れよ、後輩君」
「ど、どうも・・・」
最後まで理解できなかっただろうが、探してくれるならと一応今の状況を飲み込んだ近藤を残し、四人は美術部を後にする。
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