第5話

「はぁぁっ!」

盛大な掛け声と共に辺りに爆発音が響く。見える限りだと、投擲してくるのは羽を模したクナイ。魔力でも込められているのか地面に刺さる瞬間に一定範囲に爆発を起こしている。範囲が広いわけでは無いが、地面の吹き飛び方を見るに少なくとも直撃や爆発範囲一メートルほどにいれば大ダメージは免れない。喧嘩や武道の類はしたことないし運動もあまり得意ではないが、攻撃された瞬間には直感的に身体が素早く回避行動を起こしていた。

「ヒナ!なんか攻撃手段は無いの!」

回避しつつ、先を走るヒナに叫ぶ。

「カナデは上に飛んで!昨日の様子を見る限り、あなたに昼間の戦闘は不利かもしれない!」

「それってどういう!!」

「少なくとも貴方を連れてきた鳥は!夜行性の可能性が高いってこと!!」

もしかして、連れてきた鳥の習性とが有利不利を作ってるってことか……!

「なにか掛け声を作って!風を送り出すイメージを強く持って掛け声と同時に強く念じれば多少飛ぶ事はできるはず!!」

拳を強く握り、風の流れをイメージする。

「ふっっ!!!」

握り拳を開いて、地面に向かって叩き込むように振り下ろすと、瞬く間に体が上昇していく。上がる途中に枝を掴んで、上昇を途中で止めるも勢いづいた反動もあり肩を持っていかれそうになる。

「無事上に逃げ込んだわね、なら……!」

左足を軸に右足で弧を描き切り返すヒナ。そして瞬時に右手の人差し中指を立てて横一文字に薙ぐ。

「吹っ飛べ!!!!!突風(rafale)!!」

刹那、赫魅の体が真横に飛ばされた。しかし即座に赫魅は体勢を立て直し、立つ木の幹を横から踏む形で踏ん張る。

「案外つえーじゃねえかぁ!よぉ!!!」

踏ん張った姿勢から膝を曲げバネの如き踏み込みでさらに加速し飛びこんでくる。

「風しか起こさないなら斬るまで!来い、赫い爪(クリムゾンネイル)!」

突如として彼女、赫魅の右手に赫い刃の大鎌が現れると、進行方向の木々を薙ぎ倒していく。

「くぅっ……、蕨(ワラビ)っ!」

ヒナもすかさず得物を引き寄せるも、脇差にも満たない小刀だった。

「そんなチャチなもので押し勝てるとでも!?シャオラァ!!」

鎌が振られた瞬間、衝撃波の如く暴風が襲いかかり体勢を崩して倒れてしまう。

「首、貰ったぁぁぁっ!」

そして鎌が振り下ろされる寸前、赫魅の体が僅かに揺らいだ。

「はぁ……ふぅ……。」

赫魅という少女からかなり距離はあったが、なんとか風が届いてくれた。枝を走って渡り距離ができないように追っていたが、特性のおかげが直感で動きながらも落ちることはなかった。素質がなかったか、2度目の魔力行使で息が切れてしまった。

「……へぇ。」

赫魅が、こちらを見る。あの子は連れてきた鳥が鷹だと言っていた。自分をここに連れてきた鳥も鷹のような風貌だった。動物としては同類のはずなのに、笑みの中の一睨みで脚がすくんで動けなくなる。やはりこの世界での経験が違うからか。

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