第3話
気付けば、見知らぬ天井が目を介して私の意識に映し出されていた。
「ってて……。」
投げ出されたかの如くアバウトな仰向け状態から上半身だけを起こす。いつのまにかログハウス風の建物の中にいたが、あまりにも薄暗い。思考が中途半端なままなんとか周り全体を見渡しきり、数個ほどのアルコールランプらしきものがこの空間における僅かな光源だと把握した。
「目、覚めたかしら。」
暗闇から1人の少女が現れる、身長は私と同等……158cmかもしくはそれより少し下かと言ったところで顔つき身体つきを見ても私と同年代という印象を受ける。着ている服も大体一緒ではあるけど白シャツの裾の形状が違う。背中側に2枚ほど布地が長く伸びているが、これが燕尾というやつだろうか。
「最悪な目覚めだけど、なんとか。」
寝相最悪だったおかげか鏡を見ずとも自分の髪が乱れてるのがわかったので、片手でを擦りながらもう片方で髪を手櫛で整えていく。
「今あなたの置かれてる状況、そしてこの[世界]についての情報を何か一つは把握してるのかしら。」
首を横に振る。
あの草原に投げ出されたのは、飛んできた貴女に出会うほんの前だ、と。
「そう、なら説明させてもらうわ。といっても確定情報というわけではないけれどね。」
そういって彼女から伝えられた事、それはここが、自分が住んでた世界とは全くの軸にある世界ということ。転生や転送じゃないと思ってたがまるっきりの勘違いで、死ぬ事なく他の世界に送り飛ばされたということになる。いや、でも何故だ。ここ最近のweb小説よろしくな大きな事故事件と言ったわかりやすいきっかけが無い、あまりになさすぎる。
「飛ばされる以前に、不思議な’鳥'に出会わなかった?ここに飛ばされた子たちは基本的に、特徴的な行動を起こす鳥に出会ってる。」
「その子達は、今どこに。」
瞬間、正確に彼女の目が私の目の真ん中を捉えた気がした。
「さっき私を襲った何者かがいたでしょ、ソレよ。」
は?
「私達は、これからの自分に欲しい才能や将来的可能性を奪い合うために戦わされてる。」
「じゃあ、なんでここにきた時に鳥がここに来るためのトリガーってわかったの。」
「……最初にこの世界に飛ばされた時は、なにもわからなかった故に団結、お互い協力的だった。だけど見つかった一通の手紙で状況は一変した。」
『戦え、彼女らの才を奪うために。と』
手紙にはもう少し色々詳しく書かれてたけど、要するに殺し合えば殺した子の才能とか、あり得るかもしれない未来を奪い取れるって、そう書いてあった。殺された子たちは、才や可能性を失った状態で元の世界に帰されるから本当に人殺しをしたと言う後味の悪さはそこまで残らないけれどね。」
「成程ねぇ、まあ取り敢えず寝かせてくれるとありがたい。寝起きにはちょっと難しい話だし、まだ他に続きあるなら、日が明けたときにね。」
わざとらしく、あははといってなんとか誤魔化す。正直ほんとの話なら寝起きの惚けている状態が覚めるくらいには嫌な話である、実際に目は覚めたし。それに先程意識を失ってたのも睡眠とかではないし体の気だるさは全然残っているので寝直したい。
「わかった、取り敢えずは休みますか。って今気付いたけど、そういう戦いなら私を庇って何の得になるの。今まで攻撃する隙はあったのにその素振りは一切なかったけど。」
「あまり、戦いは好まないからね。」
そう言って身を翻し、彼女は暗闇に溶け込んでいった。
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