酸鼻を極める

「ごちゃごちゃうるさい!」

デルタは本性を現した。筋骨隆々した身体に緑色の鱗が光る。そしてフッと姿を消した。銃弾が飛び交う通りを瞬時に大衆が埋め尽くす。人の濁流が交戦当事者をあっという間に飲み込む。そして父はますます遠くなる。

「奥の手を使うしかないわね」

*は部下に命じて擲弾筒を込めさせた。カッと青白い放物線を描いて砲弾が飛ぶ。「メア、マブゼ。伏せて!」

声が届いたかどうか定かでない。私は丈夫な建物に飛び込んだ。壁がひび割れるほど揺れた。

シンと世界が静まり返っている。恐る恐る表に出ると屍が累々だった。全て同じ顔をしている。デルタだ。アンが駆け寄ってきた。

「メアちゃん?」

「はい」

そして彼女は父を探しに行った。私も急いで後を追う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る