地獄の忘備録
「謝られても…」
反応に困る、そして彼女は電光石火の早業で私を縛り上げた。
「マブゼ大佐! 出てきなさい!」
顔面解放軍は容赦ない空爆をかいくぐって地下道を疾走していた。マンホール蓋が開いて軽機関銃が差し込まれる。それでアンの部隊が被弾した。しかし、屍を踏み越えて父と*は私に肉薄していた。ごうごうと街が鳴っている
三者三様の主張がこだましているのだ。
「人間には平等に生きる権利がある。なぜ顔の美醜で生殺与奪されるのか」、と囚人が叫べば、天軍が言い返す。
「現に格差がある。何より人は美を好むのだ。そこで醜い者にも慈悲を与えようと言ってる。ψで顔を整えればいい。ただし狭い地球は諸君らに窮屈だ」
それに解放軍が参戦する。
「顔面偏差値なんて糞くらえだね。化粧はだいいち強制されるもんじゃない。綺麗になりたい奴だけがすればいい。綺麗でなくても君は素敵だといわれる権利はある」
個人の数だけ価値観があって、美意識も星の数ほどある。オシャレしたいという向上心も、そのまま素顔の自分こそ綺麗という純真も、同居したっていいじゃない、と私は思う。
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