泣いて馬謖を斬る

「あんたの娘を探すってどうやって?」

肩をすくめた*に父は奇策を呈した。「お前の財布を貸せ。ちょっと早いがお前も未来の我が子に投資しろ」

ひったくると業者のサイトにアクセスした。

「とびっきり最高級のψを包んでくれ。予算は残高すべてだ。芳名か? メア・マブゼだ。本人確実到着便で頼む。特急料金だ!」

非常時にも関わらず郵政は奇跡的に機能していた。

「ちょ、てめえ!それアタシんだろうが!」

ジタバタする*を父は諭した。「笑顔で初子に逢いたいんだろ?お前が買った平和だ」

通販業者の仕事は速い。神速と評されるだけあって、小箱を抱えたドローンが私の居所を突き止めた。

しかし、運悪く診療所の付近で銃撃戦が始まった。


「メアーッ」

乾いた断続音が父の声をかき消した。ショーウィンドウが粉砕され台車が宙返りする。瓦礫と通行人の破片がバラバラと降ってきた。物陰に閃光が煌めき、車道を渡ろうとした人が射線で縄跳びやリンボーダンスしてアスファルトに折り重なる。私は大型車の後ろに隠れたがフロントガラスが爆散した。スカートの裾を気にせず地面を転がると崩れた壁の向こうで住民が手招きしていた。

「逃げて」

私の警告を無視して彼らは腕を左右に振る。直後、大きなクレーターが出来た。

「父さんのバカ。メア・マブゼを空爆してくれって宣言するのと同じじゃん」

叫ぶと明後日の方向から返事が来た。

「そうね。私も助かったわ」

緑色の鱗に包まれた腕が差し出される。

私は目を疑った。怪物が女言葉を喋っている。

そいつはデルタと名乗った。

「ごめんなさい。私は貴女に悪いことをしたわ」

何のことだろう。

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