父と娘

結局、マリ刑務所長は顔色を伺うだけの八方美人なのだろう。平静を装っているが肝を冷やしてる。


まるでアバタモの様だ。惑星は二重構造だ。天国には労働監獄を監視する勝ち組が、地獄には瘴気と鉱山と囚人がいる。銀河被曝から人類の顔を守る成分が採れる。その採掘に美醜戦争の負け組が従事してる。

人類は宇宙進出の最初で躓いた。地球のバンアレン帯が強烈な銀河ガンマ線から皮膚を守っている。その外では急速に肌が劣化するのだ。特に顔は露出度が高い。火星に植民した第一陣は皮膚常在菌の突然変異にやられ、酷い腫瘍や皮膚病を患った。

それで帰還を希望する者と、狭い地球に宇宙植民者を閉じ込る事は虐待だと考える地球政府の間で諍いが起きた。顔の整った為政者達は「同居すると差別が起きるだろう。君達は宇宙にいてよいのだ」と強引に居場所を固定しようとした。

反発した移民者は武器を持ち出し、醜い顔した暴徒から心は綺麗な穏健派を守るためと称して政府の軍事介入が始まった。

血で洗顔するような戦いのさなか、魔法の成分ψが発見された。

戦争は半ばで閉じられ、惑星開拓はコスメ会社が担うようになった。人類はψなしに地球外で暮らせない。

ψ鉱山を中心に街が栄え、流通の一手をψ業者が握っている。


「女を殴る男は最低か?」

標的の顔面が次々に爆散する。

「そうよ。私に貸して」

銃を受け取って狙いを済ませる。次のシルエットがドレス姿だ。私はムッとしたが怒りを鎮めて撃った。

「お見事!はずれ」

拍手喝采。ポーズを幾ら真似ても父のようにはなれない。

「私も嫌な女になればいいのかしら?」

「精悍な顔つきか、柔和な良妻か。人は見かけで判断される。だが性格は表情に出る」

そういって父は残弾をくれた。最後のチャンス。今度は心を鬼にして発砲。婦女子の群れは灰になった

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