第4話 大雨の日、君は不安定になる
強い雨。警報も出ている。危ない。李仁は今日、リモートワークに切り替えたようだ。
湊音は頭が痛いようで李仁がリモートワークをしている部屋のベッドソファーで横たわっている。
教師を続けていたら頭が痛いごときでは休まなかったと湊音は思いながらも頭痛と目眩とだるさ、そしてジメジメとした空気に憂鬱になる。
同じ部屋で仕事をしている李仁の後ろ姿を見つめる。カタカタとパソコンのキーボードの音とたまに本部や店舗に連絡を取る彼の声や口調は普段家で聞くことのないものだ。
なんだかんだで昼過ぎ。李仁がふと立ち上がる。
「ミナくん、大丈夫? ずっと寝てるし……服もインナーのまま」
李仁は湊音の頭を撫でる。昼ごはんを用意するとのこと。
昨晩から降り続く雨、家での仕事がなかなか終わらない李仁のもとに部屋にやってきた湊音は雨だからと不安になると李仁に抱きつき、そのまま2人はベッドの中で愛し合いそのままの格好で湊音は寝ていたのだ。
「うん……シャワー浴びてくるよ……」
ふらつきながらも湊音は浴室に向かう。李仁は不安になりながらもソファーベッドの上を片付ける。
湊音は大雨になると不安になりやすい、いつも以上に。教師を辞める前からも。
そして不安を拭うために李仁に身体を求める。いつも以上に。手加減すると泣き出す。李仁はその湊音の不安定さに疲弊を感じていた。
別に嫌いなわけでもない。もちろん愛している。だがシーツにつく湊音の血を見て異常なまでの不安定さにどうすれば良いかわからなくなっていた。
何故こうなるのか、湊音の主治医にも相談するか悩んだのだがあまりにも個人的な話すぎて恥ずかしくて言えない李仁。
『お願い、もっと……離さないで……!』
『もっともっと……僕の中に!!』
夜の湊音の声が反芻し、李仁はうずくまる。外は大雨。
「どうすればいいのよ……どうすれば……」
シーツを握る李仁。
「李仁……?」
気づくと湊音はルームウェアを着替えて部屋に戻ってきた。
「具合悪いの? ……もうお昼だし、李仁お仕事大変だったからお腹すいたよね。今から作るね」
「ミナくん……ミナくんは居間のソファーで座ってて。わたしが用意する、その方が気分転換になるの」
李仁は泣き顔と血のついたシーツを見られないように湊音と共に部屋を出る。
「李仁、早く雨止んでほしいね」
と言い、ソファーで横たわる湊音。
「そうね、明日には止むわよ」
李仁の目線にはダイニングの上に置いてあった湊音のスマホ。着信が来てきた。マナーモードになっており、音は鳴らない。
表示画面には
「シバ」の名前。
その表示を見たあと外の大雨を見る。
李仁は湊音の不安定さの原因がわかったようだ。無言で着信を切った。
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