第5夜 惰眠、怨嗟、虚無。

 今日も、夢を見る。いつもと同じように、夢を見る。



 最近、酷い悪夢を見る。殺される夢だ。なぜ殺されるのかもわからずに、毎度毎度同じやつが「お前が悪いんだ」なんて言って殺しに来る。その方法は時によって変わる。絞殺、刺殺、撲殺、轢殺。この世のありとあらゆる死に方を経験したんじゃないかってくらい死んできた。ほら、今日も殺しに来た。

「お前が、、、お前が悪いんだ、、、」


・・・・・・・・・


 そして夢の中で殺されてから、俺の目は覚める。そしていつもと同じ一日を過ごして、また眠りに落ちる。今日はどんな死に方をするのか、少し興味が湧いてくる。夢の中で目が覚める。知らない場所。しかし、誰も俺を殺しに来ない。ちょっとした違和感。ちょっとした虚無感。そんなものを抱えながら時間が経つのに任せ、眠りにつくこともないまま一日が過ぎた。

「おい、どうすんだよこれ、、、」

 死ななければ夢が終わらない。それはつまり、目覚めることがないということだ。

「まだ仕事があるんだ」

 早く目覚めなければ。起きたあとの生活が立たなくなる。つまり、

「なんとかして死ななきゃならない、ってことか、、、?」

 とにかくあたりを調べる。どこかにあの気味が悪いやつがいないか。

 いくら探してもいない。なら他に俺を殺しそうな人間は?何故か持っているスマホで調べる。最近のネットニュース、SNS。……見つけた。近くに刃物で暴れている男がいる。急いで向かうと、いた。警官数人と野次馬に遠巻きに囲まれている。

「クソッ、こっち来んじゃねぇ!刺されてぇのか!?」

 なんとか内側に入り込むと、男が包丁のような、ナイフのようなものを振り回して何かに抵抗していた。

「おい、何してんだ」

 一応聞いておく。

「あぁ!?見りゃ分かんだろ!?お前も刺されたくなけりゃどっか行ってろ!」

「……そうか」

 経験は「逃げろ」と言っている。しかし、立ち止まってはいられない。

「おい君、止まりなさい!」

 警官が何かを言っているが無視。男の方へ走る。

「こっち来んなっつってんだろ!?」

 動転した男がこちらにナイフを向け、そのナイフが俺に刺さる。予定通り。激しい痛み。倒れた俺に向かって、男が何かを言う。

「お前が、、、お前が悪いんだ、、、」

 ああ、そうだな。そう思ったが声には出ない。

 意識が落ちる。


 そして目を覚ます。……ここは、どこだ?



「、、、!?」

 夢が終わる。暗転したテレビの画面が、真っ青になった人間を映し出している。

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