第4夜 復讐、そして…

 今日も、夢を見る。いつもと同じように、夢を見る。



 今日の主人公は、高校生か?それくらいに見える。その高校生には友人がいた。まあここでは名前は明かさないでおこう。その友人が冤罪を被せられ、犯人として捕まってしまったのだ。彼は決意する、「復讐をする」と。幸い嵌めたのが誰かはわかっている。Cとでも呼んでおこう。あとはそいつを見つけ出して、然るべき報いを受けさせるだけだ。

「おい」

「はい?」

「○○○○○という名前に聞き覚えはないか?〜〜な服装をしているやつだ」

「いや、知りませんね。人違いじゃないですか?」

「いいや、人違いのはずがない。C、お前にもわかっているんだろ?」

「………」

 しらばっくれることはもうできないと踏んだのか、そいつはやにわに走り出した。というか逃げ出した。

「おい、どうして逃げるんだ?そんなことをしたら、嵌めたのは自分だって白状しているようなもんだぞ」

巫山戯ふざけるな!なんで俺が復讐の対象にならなきゃいけないんだよ!俺はNの命令に従っただけなんだ!」

「自分でもわかってるんだろ?」

 お前が巫山戯るな。そう言って、距離を詰める。

「おい、やめろよ…おい…」

 その後に何があったかは言うまでもないだろう。ただ、暴力があっただけだから。

 後日、Cが逮捕されたというニュースが様々なメディアによって広まった。そしてNの名前も。皆が皆あれらを「他人を嵌めた極悪人」だの、「人生を無茶苦茶にした悪魔」だのと並べ立て、世論はCとNを批判するムードへと移行しつつあった。だが、彼の意識はそんな人間にはなかった。いや、「そんなことを気にしている余裕もなかった」というべきか。そう、彼は、

「なんだあれなんだあれなんだあれ!?おかしい、何かがおかしい、どこで間違えた?どこだ?」

「ねえ、どうして逃げるんだ?そんなことをしたら、『私がやりました』って公言しているようなものじゃないか。どうして逃げるんだ?」

「とにかく家に入ってしまえばこっちのもの、警察を呼ぶなりなんでもできるはず、とにかく家まで逃げないと」

 這々の体で家まで逃げ帰り、ドアの鍵を閉める。

「何だったんだ、あいつ…」

 そう言って、鍵がかかっていることを確認する。

「は?」

 鍵が、開いていた。ドアがゆっくりと開く。


「家もだめとかどうすればいいんだよ!」


 後日。彼は友人に電話をかけている。

「オッス、久しぶり。元気してた?」

「久しぶり。特に何もなかったから元気だったんじゃない?」

「そうか、良かった」

「で?なにか話があるんでしょ?」

「ああ、でも、まあいいか。単刀直入に言うわ、ナイフ貸して」

「わかった」

「…え?いいのか?」

「あんたがそういうってことはなにか理由があるんでしょ?聞かないからさっさと受け取りなさい」

「…ありがとう」


 翌日。「あれ」が来た。

「久しぶり」

「帰ってくれ」

「友達に向かってその言い方はないんじゃないか?おじゃましま~す」

 友達なんかじゃない、

「止まれ!」

 手にしていたナイフを振る。それは思った以上の切れ味を発揮した。

「痛いよぉ、やめてよぉ」

「これ以上近寄るな!今度は刺すぞ!」

「やめてよぉ、やめてよぉ、、やめろォ!」

「来るな!」

 ナイフで「それ」を突く。確かな手応え。

「やめろよぉ、痛い、やめろよぉ」

 そんなことを言ってそれは倒れた。

「もしもし、警察ですか?」


 このことは正当防衛による殺人と認められ、実質的な無罪となった。法律上は。


「これで…全部終わったか…」

 そんなことを呟いてドアを見る。たしかに閉めたはずの鍵が、開いていた。


 厭だ。そんなことはありえない。



「はっ!?全く…なんか、嫌に生々しかったな…」

 やはりテレビはついている。

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